兎の決意-6
「どんな顔してあなたと会おうかと思ってたけど、まさか家に来るなんてね」
「え?」
「ケータイ」
「ケータイ?」
「持ってる、わよね? 見せてくれる――あの、画像、消してないでしょう?」
「あ、ああ。そうだな……じゃあ、これ」
「あなたは、見なくていいから!」
俺が自分のケータイを操作しようとすると、ツキコは俺の隣まで来て、そのケータイを奪い取るようにした。
いつもは白い顔が赤らんでいる。
先日の衝撃的な携帯メールについての話は避けては通れないところだったが、急にその話題になって俺も少々動揺した。
「あ! これ……うわぁ……」
ツキコのカチカチと操作する指がにわかに止まり、画面を見て唸っている。
俺は、そんな彼女を見てどうすることも出来ない。
「あれ!? うわッ! ちょっと、これ顔、写っちゃってるじゃない!?」
普段冷静なツキコの声が上ずって、慌てて画像を覗き込んでいる。
とはいえ、この画像を撮ったのは彼女自身なので、どうにもならないのだが……
ツキコはしばらくケータイの画面を見つめた後に、俺を呪うように見やる。
「これ、いかがわしいサイトとかに載せたりしてないでしょうね?」
「そんなこと、するわけないだろ! 送られた時に見て、そのままだよ!」
「誰かさんにのせられて、とんでもないことをしてしまったわ」
「俺? いやいや、俺だって見た時には、どれだけ驚いたことか」
ツキコは、やや下を向いて唇を噛んで、俺から目をそらすようにした。
「やっぱり、見たのね」
「そりゃあ、だって送られてきたから……でもほら、なんていうか」
「――――」
「きれい、だったよ」
俺は気まずい雰囲気の中、ようやくそこまで言うことが出来た。ツキコは沈黙のままだ。
きれいと言ったが、語彙が足らないのか、それでは何かが足りないような気もした。
彼女の白い伸びやかな肢体は、確かに美しく、しかし妖しさも感じたのだ。