止められない〜新たな人物〜-2
「ほら…鈴姉。大丈夫?」
「んにゃ…うるひゃい!…スゥ…スゥ…」
あれからすっかり酔いつぶれた瀬里奈と鈴香を、由紀は一人で看病していた。
寝息をたて始めた鈴香に毛布をかけ、瀬里奈の元へ向かう。
「姉さん…風邪引くよ。寝るならベッドに行こう?」
「ん…連れてってください…ゆきぃ」
普段よりも甘えた声をだす瀬里奈。
由紀は瀬里奈を部屋に寝かせるため、抱き上げる。
「ひゃっ…由紀…これ…」
「え?」
いわゆるお姫様抱っこなのだが由紀は気づいていない。
瀬里奈は嬉しそうな表情のまま由紀に抱きつく。
「ほら…姉さん…」
部屋に着くなりそっと瀬里奈をベッドに寝かせる。すると、
「由紀…エッチしたいですぅ」
潤んだ瞳で由紀を見上げる。
「…だ、だめだよ…」
「どうして…?」
「だって…下には鈴姉も寝てるし…」
「む…」
由紀の言葉に不満げな顔を見せる瀬里奈。直後、いきなり由紀を抱き寄せて唇を奪う。
「んんっ!ちゅ、ちゅ…はぁ…!姉さん…?」
「鈴香がいたって関係ありません。…むしろ見せつけてあげます」
(え…?怒ってる?何で?)
普段の瀬里奈とは何か違う。酔いのせいだろうか。
そんなことを考えていると、瀬里奈によって完全にベッドに引き込まれた。
「ゆきぃ…いっぱい…犯して…」
愛する女性の放つ淫らな言葉に、抗うことなどできるはずがなかった。
「ん…んー…あれ?ここ…?」
由紀が瀬里奈を自室に連れていってからしばらくして、鈴香がようやく目覚めた。
「由紀…瀬里奈…?」
起きてみれば自分一人しかいない。キョロキョロとあたりを見回すが…いない。
(部屋かな…?)
時刻はすでに日付も変わり、さすがに家に帰らないといけない。近所なので泊まってもいい気はするが、明日は出かける用もある。
二人に帰る旨を告げようと二階に上がる。
「ん…ぁ……ぁ…」「え…?」
瀬里奈の部屋からかすかに声が聞こえる。やはり部屋にいるのだろう。しかし、これは…
どうしても気になってかすかに開いたドアに近づき中を覗く。するとそこには…
グチャグチャグチョ!
「はぁ、はぁ、あっ…はあ!ゆ…きぃ!もっと…!もっと突き上げて!もっと奥までグリグリしてぇ!」
(な…!)
室内では全裸になった瀬里奈が体をドアの方に向け、同じく全裸になった由紀に下から騎乗位で突き上げられている。
由紀の表情は瀬里奈の体に隠れて見えないが、瀬里奈は明らかに歓喜と情欲を宿した顔だ。
「ひゃっ!あ、あ、あ、あ!」
由紀が下から突き上げるたびに、瀬里奈の胸が淫らに揺れ、声の調子もあがっていく。
(そんな…何で…)
頭の中が真っ白の状態で、禁忌の行為に見入ってしまう。
すると…
(…!あ…)
鈴香と瀬里奈の視線が一瞬重なる。そして瀬里奈は…一瞬だけ笑顔を見せた。
「ああぁ!由紀!由紀!も、う…!いきますぅ!」
瀬里奈はビクビクっと全身を痙攣させ、口からは涎を垂らしている。
一見するとだらしない顔だが、瀬里奈の美貌と相まって同性ですらドキッとする表情だ。
「ん…ぁ…は…ああ!?由紀!まっ…!」
「だって、俺まだいってないよ?」
「ふぁぁ!まっ、てぇ!私…いったばかり…です…!あぁ!」
由紀は瀬里奈をうつ伏せにさせると、そのまま激しく突き込んだ。
もう…見ていたくなかった。
足音をたてないようにその場を離れ、そのまま家を出る。
「あぁ…!気持ちいい!もっとぉ!」
「………」
家までの道を鈴香は歩いていた。家までそう遠くないのに、ひどく長く感じる。
「ゆ…き…」
さっきの姿が頭に浮かぶ。あの姿を見たとき、姉弟なのにおかしいなんて、そんな思いも出た。しかし、それよりもはっきりと分かった想いは、
「くっ…由紀…うぇ…」
涙が溢れて、零れる。
あの二人の愛し合う姿を見てやっと気づいた。
自分はこんなにも、進藤由紀を愛している。他の女を抱く姿を見るだけで、胸がズタズタにされたように痛む。そんなに愛しているんだ。
「う、うぅぅ…!由紀…好き…!好き…!」
その場にしゃがみ込み、鈴香は泣き続けた。
『好き』を、繰り返し呟きながら。
「…由紀…ありがとうございます。気持ちよかった…♪」
「俺もよかったよ…」
鈴香が家を出てしばらくして、ようやく睦み合いを終えた二人は、互いの体を抱きしめあいながら余韻に浸っていた。
「ねぇ…由紀…」
「何?」
「由紀は…私のモノですよね…?」
突然の瀬里奈の発言に、由紀は目を瞬き、思わず苦笑する。
「何、いきなり?どうしたの?」
「由紀は…私のモノなんです」
「姉さん…?」
次に発せられた言葉は、自分にではなく誰かに告げるような口調だった。
しばらく無言の時が続いたが、急に、瀬里奈が由紀を強く抱きしめてきた。
「愛しています。私の…私だけの由紀」