縄灯(後編)-6
キジマは手にした赤い極太の蝋燭に火をつける。青白い炎がゆらゆらと妖しく揺れ、蝋が溶け
る臭いが私の鼻腔に漂ってくる。
「…きれいだ…あんたは実に艶めかしい肌をしている…男を狂わせる肌だよ…」
彼の言葉に私の胸が小刻みな動悸を打ち、しだいに疼きが増してくる。
私は蝋燭の妖しく揺れる橙色の炎に吸い込まれる恐怖を覚え、縄で縛られた体を捩りながら
身悶える。
「溶けた蝋燭がいい色に耀いていると思わないかい…あんたの真っ白な肌によく似合う色だ…」
キジマの卑賤な瞳の中が殺気だったようにぎらつく。彼は薄ら笑いを浮かべながら蝋燭の炎を
ゆっくり私の縛られた乳房の上にかざす。
「…いっ、いや、やめて…」
私の背筋にすっと悪寒が走り、嗚咽を洩らすようにふと呟いた。なぜだかわからなかった…。
蝋燭の火が恐かったのではない…キジマの瞳の奥で私自身の中に潜む鬼が光の渦のように歪み、
燦爛と輝き始めたのが怖かったのだ。
蝋燭の炎が妖しい光芒を放ち、私の胸肌を不気味に照らし出す。黒々とした縄の喰い込んだ
乳房がねじれながら迫り出し、ふくらんだ乳首が怯えるようにそそり立ち、ぷるぷると揺れて
いる。
キジマはゆっくりと私の乳房の上に蝋燭を近づける…。炎の熱が、まるでキジマの淫猥な視線
となってじわじわと私の皮膚に伝わってくる。
私は自分の乳房の谷間をうっすらと照らし出す炎を凝視し頬を強ばらせる。淫魔にとりつかれ
たようなキジマの瞳が炎の光で極彩色に染まっている。宙に吊られた私のからだが縄とともに
ねじれ、天井の梁に絡んだ縄が私を嘲るようにギシギシと音をたてる。
そして不意にゆらいだ蝋燭の炎とともに、蝋涙の赤い雫が乳房の先端にすっと滴った…。
…あうっ…ううっ…
乳首を針で刺されるような熱さが痛みとなり背筋を強ばらせる。血色の熱蝋が次々としたたり
乳首の先端から乳房のすそ野へ向かって流れ、幾筋かの赤い文様のような痕を描いていく。
痛みでありながら甘美な快感に私の肉奥が微かに囀り始めていた。蝋燭の先端はゆらめくごと
に小さな光の点となった熱蝋を零し、音もなく私の乳肌の表面に赤い条痕を描いていく。縄の
喰い込んだ私の乳房がひくひくと小さく蠢いているのがわかった。
凌辱と苦痛…いや、キジマは刺青のような赤い筋模様を私に肌に刻むことによって、私の中の
鬼を目覚めさせようとしているのだ。
…ううっ……うっ、うっ…
キジマは私の肌を染める熱蝋に陶酔したように目をぎらつかせていた。
しだいに私の首筋に汗が滲み、肢体はさらに艶めかしく冴えわたり始める。私は熱蝋と縄の痛
みによって膣襞を小刻みに震わせ、淫蜜を止めどもなく溢れさせる。ひしひしと肌に湧き上が
る情欲とともに、子宮の奥が独りでに熱く爛れていくことを私は止めることはできなかった。
やがて赤い蝋燭を手にしたキジマは、胡座に組まされた私の臀部を撫でさする。