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「貴女は生きなければならない、貴女が死んでもあの人の所には行かれないんだよ。貴女が死んでもあの人は喜ばない、それは貴女がよくわかっているでしょ?」
母は言いながら泣いていた。人が悲しむとこういう顔をするんだと漠然と思った。叩かれた痛みはなかった。少し落ち着いて母は私を抱き締めた。その暖かさに私は堪え切れず涙した。人がこんなにも暖かいものだと知らなかった。数日後あの人のお葬式があり私は決意した。誰とも関わらないで生きると…自分が誰かと関わることで悲しませてしまうなら私は誰とも関わらない。それに積み上げた全てを崩してく思いもそれまでの言葉もなにもかも…それからの私は独りだった。けれどあの人を思い出すだけで私は寂しくなかった。誰かと関わりたいという欲求もなかった。あの人を遠く感じることをしたくないのも理由だけど。あの人を忘れたくはなかった。そして私はそれを貫き通してきた。だから貴方に会った時の自分の言動に驚いた。あの人以外で関わるのなんて貴方が初めてだったから…
私は迷っていた。これから貴方と関わるかどぅするか、もし貴方を亡くしたら私はもう生きれないと思う。あんな傷は付きたくない。離れるなら今かも知れない。
私は携帯を手にメールを打ちはじめた。もちろん貴方に…
《ありがとう、卒業は嫌だな…離れなきゃいけないじゃん?》
私は貴方から離れたいのか近づきたいたいのか解らなかった。私の今の行動はあの人に背いているのだろうか?
貴方からのメールが届いた。
『卒業は区切りでしょ?この場所から解放されたいんだ…此処に居るには仮面が必要だから』
私には解らなかった。
《解放?仮面?》
何のことだろぅ…?
『僕の周りの人は僕を束縛する。きっと独りが恐いんだろう…だから適当な僕の所に来るんだょ。だから僕離は都合のいい人になろうとした。僕自身が自分の心を見せたくないし独りなりたくないせいもある。貴女に会ったあの日、僕は友達だと思ってる人と話していた、僕はその日自分の気持ちを少し打ち明けた。学校が嫌いだと傷つくのが嫌だから人を信用しないのだと…したらその人は一言「そんな人だと思わなかった」って言った。僕は本心を見せてはいけないんだと思った。貴女もこんな僕が嫌なら離れてくれて構わないから』
貴方からのメールを読んで私は苦しくなった、自分を見て感じてくれないことがどんだけ恐いか私には想像もできない。私だったら、そんな環境では生きれない。自分を感じて見てくれない人だけの所では自分が生きてる価値をはかることはできない。私にはあの人が居たから此処まで生きれた。貴方は…
私は貴方から離れないと決心した…この人に孤独な思いをさせない。そう思った。あの人はこんな私をどう思うだろう…
《貴方から離れない、私は貴方の近くに居たいと思う。駄目?》
『ううん、また突き放されたと思ったから…僕が友達だと思っていた人と貴女は似てるように見えた、本当は違ったのに…』
私は嬉しかった。何だか受け入れられたことが幸せだった。こんな気持ちは何時ぶりだろう…
学校から家に着き私は今日色んなものを思いだし色んな思いを知った。生きてるとこんな日もあるんだ、それに心に時間は関係ないと思った。

それから卒業まで私は貴方とメールのやりとりをしお互いに言いたいことを言っていた。貴方と学校で話すことはなかったけれど一緒に出掛けたりした。会話が続かなくて沈黙が二人の間に流れても気まずくなかった。沈黙すらも心地いい感じだった。貴方は私に言った。
「こんな時間がずっと続けばいいのに」
「うん、」
「貴女と居ると気楽で仮面が要らない、素になるってこんなに楽なことだったんだね」
「うん、自分のままで生きるのって難しいけど素顔になれる。自分の居場所があれば幸福だよね」
「そうだね」
貴方と言葉を交わして、あの人以来の心地よさを感じていた。
数日後、全てを流すように卒業式が始まった。
イイコトばかりだけみたいな言葉が並べられうんざりだった。そんな綺麗な人生を歩いてる人なんて居ない、私は心の中で毒づいた。
私と貴方は二人で帰った。全てから解放されるように…
私と貴方は撰んだ道は違うけれど、貴方と必ず会う日がある。それは貴方と初めて言葉を交わした日。私と貴方にとって大切な日。


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