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私の王子様
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魚永市文化センター-2

お腹が空いてグウグウ鳴っていたけれど、私は辛抱強く待った。

私のお腹の音を聞いて前に並んでいた子達が顔を見合わせて笑っていたけれど、そんなことは今の私にはどうでも良い。

王子様と握手できるのだから。それにしても時間がかかる。

普通1人につき5秒で終わるはずなのに、10秒以上かかっている。

終わると控え室から外に出される。

友達と一緒に出て行く女の子は、ずっと手を洗わないとか言いながら舞い上がっていた。

私の番になって控え室に入った。お付きの人が私を中に入れて言った。

「王子、この子で最後です」

王子は私の顔を見て何故か驚いた様子をしてから握手してきた。

ああ、体中に電気が走ったみたいになった!

気がつくと王子は私の手の甲をじっと見ている。

そして今度は私の左手を取ってまた手の甲を見ている。

なにやら外国語を喋るとお付きの者が私を椅子から立たせた。

私はお辞儀をしてから部屋を出た。ありがとうございました。

もう私はこの世に思い残すことがないくらい感動していた。

何かお付きの人とかが言ったような気がするが、これ以上私の為に時間を取らせたくないので足早にそこを出た。

女の子たちがゆっくり歩いているのを追い越して、とりあえず角を曲がると女子トイレに入った。

なにやら外が騒がしかったが、私はトイレの手洗い場の水をゴクゴクと飲んだ。

やたらと甘い物が食べたかったが、水だけで我慢した。

そしてトイレの外に出ると、お付きの人が女の子達数人を呼び止めて何か話している。

私の姿を見ると驚いた顔をして指を指した。

「そこにいたんですか? 捜しましたよ」

私はなんだかわからなかったが、きっと一番最後の人には記念品でもくれるのだろうかと期待してついて行った。

それがサイン入りの色紙だったら絶対嬉しいが、食べ物でもかなり嬉しいなとか不埒なことを考えていた。

控え室に連れ戻された私はクラスニー王子の前に立たされた。

「あなたのお名前は?」

王子に聞かれて私は言った。尾鞍浜美紀だと。王子は頷いた。

確かそんなような名前だったとかお付きの人に言った気がする。

そしてなにやら外国語でお付きの人に言った。

「お嬢さん、王子が前に会ってる人に似ていると言ってます。

あなたは以前王子と会ってますか?」

私は今日初めて会って光栄だと言った。つまり前に会ったことがないと。

王子はがっくりとして頭を抱えてしまったが、またなにやらお付きの人に話した。

お付きの人は困った顔をしていたが、やがて私にこう言った。

「あなたの家族や親戚で、あなたに良く似た女の子はいませんか?」

私は被災して孤児になったから、そういう人間はいないと答えた。

2人はしばらく相談していたが王子は直接私に言った。

「美紀さん、私の養女になりませんか?」

王子の言うには、私が自分の捜している少女ととても良く似ているのだと言う。

その少女を捜すことはできなかったが、たまたまそっくりな私が孤児だと聞いて深い縁を感じて引き取りたいと言うのだ。

夢のような話だ!

私は是非お願いしたいが、その前に何か食べるものがほしいと言った。

それを聞いて王子とお付きの人は顔を見合わせて微笑んだ。

その後、私は朝から食べてなかったのでお腹一杯食べさせてもらった。

私はホテルの一室を与えられ、その晩はゆっくり寝た。

 


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