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私の王子様
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栄浜海洋記念館-1

翌日、私は王子と一緒に外出した。王子はワンボックスカーに乗った。

以前に見た気がしたが、どこにでもあるようなワンボックスカーだからか。

私も一緒に乗ると車は海岸沿いの県道に出て、どんどん私の故郷の栄浜に向かって行く。

そして驚くことに栄浜の海洋記念館の前で止まったのだ。

王子様は瓦礫に囲まれた栄浜を見て首を横に力なく振ると、大きな花束を両手に抱えて屋上まで階段を登って行った。

実は私もこの光景を見るのは初めてだった。

私は昨日からの幸福感は消えて、被災直後の傷ついた心にフラッシュバックした。

あの時以来生まれ故郷の栄浜には来ていなかったから。

故郷も家族も村の人たちの笑顔もそこにはなかった。

ずたずたにされた私の故郷……。

私は溜息をつきながら王子の後に従って階段を登って行った。

私は屋上に上がってびっくりした。

屋上にまで瓦礫が流れ着いている。

そして何故かゴムボートが繋がれていた。

私はロープの結び目を見た。その舫い方には人それぞれの癖があるからだ。

私も漁師の娘だから船の舫い方にも自分なりのやり方を持っている。

そしてそれを見て驚いた。私の舫い方と全く同じだったからだ。

「こ……これは!」

私は気が遠くなって目の前が真っ暗になった。



 


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