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私の王子様
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魚永市文化センター-1

夢も希望もなく死にたいと思っていたとき、不思議な物を見てしまった。

私は何度も自分の頬を平手で叩いてみた。信じられない!

それはコンサートのポスターだった。

な……なんと、私の王子様が鳥永市文化センターにやって来るというのだ!

あんな田舎の文化センターにクラスニー様がやって来る。

それは内閣総理大臣が隣の家に引っ越してくるよりもありえないことなんだ。

私はその日鳥永市の文化センターまで行った。

特設避難所から1キロも離れていなかったからラッキーだった。

会場にははいれなかったけれど、建物の外で王子様の歌声を聞いた。

公演が終わってぞろぞろと観客が出て来たところを私は逆走して中に無理矢理入った。

年配の女性の係りの人が近づいて来たので、私は言った。座席に忘れ物をしたのでと。

「何番のお席ですか?」

私は動揺した。えーっと何番だったかしら。あれ?思い出せない。

場所は大体わかるんですけど、後ろの方なんです。

そう言って誤魔化して会場に入った。係りの人もついてきてくれた。

そして座席を捜して廻った。すると偶然女物の財布が落ちていた。

あっ、これは私のではないですけど、落し物です。

係りの人にそれを渡した後で、しまったと思った。私は無一文なんだ。

でも猫糞はできない。

「あなたの忘れ物も財布ですか?」

係りの人に私は言った。良いんです。そして嘘と本当を混ぜて言った。

お菓子の袋でまだ食べてなかったんですけど、もう良いんです。

ただクラスニー王子様をもっと近くで見たかったけれど、それができなくて残念です。

「できますよ。あなたにはその資格があります。

入場したとき握手券を貰わなかったみたいですね」

握手券?! 入場してなかったから、当然貰わなかったけれどそんな物があったとは。

係りの人は控え室の方に私を連れて行ってくれた。

すると控え室前の廊下に女の子の長い列が続いていた。握手会だ!

「クラスニー王子はここの被災者救済のためのチャーリティコンサートを開くことと、高校入試を控える中学3年生に、合格祈願握手会を開催することを申し出てくれたのです。

該当する人には握手券をお渡しした筈ですが、もしかして中学2年生とかですか?

多少学年がずれてても申し出れば渡してたので、構いませんよ」

そう言いながら係りの人は私に握手券をくれた。

私が最後列に並ぶと、その人は私が拾った財布を見せてから言った。

「実はこの財布、あなたに会う前に別の人から失くしたと届け出がありました。

正直なあなたに良いことがあると良いですね」

そのとき私は猫糞しないで良かったと本当にそう思った。

 


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