憲=頼りない?-4
「お、落ち着け…独。考え直せ!」
「知るか!!もはや誰にも俺は止められん。今日から俺はバレンタイン・キラーだ!!フハハハハハ…………ッ!!!」
あぁ、いつもの二枚目半な独がどっかに行っちまった……。失恋って恐ろしい。
が、日頃の行いが良いのだろうか、救いの手がさしのべられた。
しかも、俺だけじゃなく、独にも。
いや、寧ろこの救いの手は独に向けられていた。俺はその余波で助かったのだ。
「あ、あの………」
「「ん?」」
高笑いしていた独とオロオロしていた俺が同時に声がした方を見ると……。
「八木……」
そこに立っていたのは、八木愛里だった。
八木はチラチラッと俺を見た後に独を見た。
その八木の瞳の感じで、俺はピーンときた。
が、基本的にモテる癖にニブチンな独は俺と別な解釈をしたらしい。
「ちぇっ!!まぁた憲かよ。邪魔ものはさっさと退散……」
「ち、違うの!」
「へ……?」
背を向けた独に八木が叫ぶ。やはりな……。
「あ、あの……」
モジモジとした八木は俺の目から見ても可愛かった。
グイッと独の首に腕を回して、ボソッと話す。
「おい、独。泣かすなよ」
「………」
「泣かしたら、多分クラス中の女子を敵に回すぞ。それにな、白雪の話じゃ、八木はかなり頑張ってチョコを作ってたらしいぜ。どこがお前ばっか不幸なんだ?充分幸せもんだ」
八木は人気あるしな。
独に回した腕を解き、俺はその場を後にした。
あと、当人二人の問題だ。八木の告白を受け入れるか受け入れないかは独が決める事だ。
俺がとやかく言う事ではないし、無論見ていて良いものじゃない。
さて、独の問題は一応決着を見た。
次は俺だ。
「遅いぞ」
待ち合わせの場所では、ちょっと待ちくたびれた白雪がいた。まぁ、いるのは当然か。
「悪い悪い。失恋した独に絡まれてな」
「それは災難だったな。で、高坂は?」
「八木とお話中」
「……そうか。上手くいくと良いな」
「まぁな」
さて、俺たちは上手くいくかな?
「じゃあ……」
「その前に、話したい事がある」
チョコを出そうとした白雪を止めた。
「?」
「白雪……ゴメン」
「な、なんで謝るんだよ!?」
いきなり謝った俺に白雪は当惑する。
「今日……白雪の誕生日だろ。でも、プレゼント…用意できなかった」
「へ……?」
「ゴメン。何がいいか悩んでるうちに今日になっちゃって……」
「あぁ、そういや今日はアタシの誕生日か」
「はぁ?」
「いやぁ、チョコの事ばっか考えてたから、すっかり忘れてた」
「…………」
言葉も出ない。絶句とはこの事だ。
「アタシも忘れてたんだ。無くてもいいよ、プレゼントなんて」
そこまで、あっさり言われると拍子抜けする……。