憲=頼りない?-2
ついでに言えば、白木さんのキャラも変わった。
普段は互いにクールな接し方をしているが、二人っきりになると豹変する。
場の空気もピンク色に変わるのだ。もう、目に見えるんじゃないかってぐらいに。
白雪の家に行くと、必ず白木さんの靴が玄関にある。
そして、俺が帰るまで一切、姿を見せないのだ。もちろん孝之も同様である。
そんな事は露しらず、白木さんに恋焦がれる哀れな男が一人……。
この頃、アイツかなりそわそわしてたからなぁ。
普段からアイツはモテる。恐らく明日はアイツの下駄箱及び机はチョコでいっぱいになるだろう。
しかし、孝之はそれについてはそれなりに喜びはするだろうが、心の底からそうかと言うと絶対そうじゃないだろう。
アイツは昔から一途な所があるからな。アイツが貰って本当に喜ぶチョコは、決して貰えないチョコなのだ。
全く哀れすぎて涙を誘う。
頑張れ、独。
人は恋に敗れる事によって強くなるらしいぞ。
多分、いつか良いことあるって。
と、独を応援しつつ、ちょうど良いから白木さんに相談しよう。
「いや、バレンタインじゃなくて」
「あれ?チョコの事で悩んでるんじゃないの?」
「いや、ほら明日は……」
「え?………あぁ、そうね。そうだったわねぇ」
そうなんだよ。明日なんだよ。
「何にも用意できてなくってさ……」
「アタシに相談されてもねぇ。とりあえず何か贈ったら?白雪はあなたからのならなんでも喜ぶわよ」
だからだ。なんでも喜ぶから、本当に喜ぶものを贈りたい。
しかし、結局良い案は思い浮かばず、チョコを作るために白雪の家に行く白木さんと別れて俺は自宅へと歩を進めたのだった。
はぁ……憂鬱だ。
彼女がいるのにこんなに憂鬱な気分でバレンタインを迎える人間はほとんどいないだろう。
結局何にも用意出来ずにこの日が来てしまった。
現在、昼休み。
恐らく、放課後と並んでチョコを渡す女子が多くいる時間帯だろう。
「なんで暗い顔してるの?」
「…ん?あぁ、八木か。いや、ちょっとな」
横を向くと八木が立っていた。
「白雪のチョコの事?昨日はアタシ達、それぞれの家で一人っきりで作ったからどんなのかは知らないけど、白雪……張り切ってたよ」
「それについては全く心配してないよ」
もっと別の事で深い悩みがあるのだ。今更悩んで、どうなると言うわけでもないが……。
「ふぅーん……。あぁ、はいこれ」
そう言って、八木は小さい包みを取り出した。
「俺に?」
「そっ。義理だけどね」
う〜ん、ちょっと嬉しい。いやいや、ちょっとと言うのは不適切な発言だ。
白雪には悪いが、やはり良い気分になる。
「どうも。ありがたくいただくよ」
「じゃ、アタシは白雪に睨まれない内に退散するね」
そう言って、俺の席から離れていった。
少し遅れて白雪がやって来た。
「愛里からチョコ貰ったのか?」
ちょっとムスッとして、俺に顔を見せないように話しかけてくる。
「焼きもちか?」
「なっ!?だ、だだだ誰が焼きもちなんて焼くか!!あ、アタシは別にだな!!」
「冗談だよ」
顔を真っ赤にしてうろたえる白雪の反応は可愛いもんだ。