危険な娘-2
「アケミ! お前は外に出られない。体がこっちに戻って来る!」
アケミは一度催眠にかかっているから、このような瞬間催眠にもかかりやすいのだ。
アケミは男の横に並んだ。
「これから2人は私の質問になんでも正直に答える。
正直に答えるととても気持ちが良くなるから、すっきりする。
隠し事は良くないことだ。
特に悪だくみは天罰が下るから、そうならないように正直に言おう」
「そ……そうだ。正直に言う。なんでも聞いてくれ」
私は男に質問した。どうしてこんなことを思いついたのかと。
「アケミから聞いた話だと、ここに来た筈の高校生たちが皆成績が良くなっているから怪しいということになったのよ。
断られた筈なのに、お金を持っていない。こいつは怪しいってことになってよ。
催眠術で記憶を消してんじゃねえかってことになったのよ。
ついでに俺が催眠術使えるなら、女の子なんか頂いてしまうけどね。
きっとそういうこともやってんじゃねえかって、これは脅して金を巻き上げられると踏んだのよ」
私はぞっとした。この連中はシノギになると思ったら、こんなとこにも目をつけるのかと。
だが、こんな零細企業?にたかったって、金なんて持っていないから意味ないと思うのだが。
「金が目的じゃねえよ。もちろん金も巻き上げるけどね。
アケミを抱かせて、それを弱みにして仕事をさせるのよ。
女子高生とか若い女に催眠をかけてもらって売春(うり)に使うって訳さ」
私はこのことを知っている人間が他にいるかどうか気になった。
「もし万が一この俺が先生に催眠をかけられてしまったら何にもならない。
そのときはアケミが外で待っている若い者を呼んで、先生を叩きのめすことになっている。
そいつの名前はゴロウって言うんだ。俺の可愛い舎弟だよ」
私はアケミに玄関から手招きさせた。
するとゴロウという男が玄関に飛び込んで来た。
手にはメリケンサックをはめている。私は言った。
「こっちだ!」
ゴロウが私の方を向いたときにフラッシュが光った。
たちまちゴロウはフリーズした。
私は3人の関係を確かめた。
アケミはゴロウがたぶらかして、兄貴分にも抱かせたらしく、彼女は売春もさせられていた。
「まずアケミを自由にしてやるんだ。高校生だから、勉強もしなきゃいけない。
それと聞きたいことがある。私はどうしたらお前達に狙われないですむんだ?」
兄貴分はちょっと考えてから言った。
「それは、あんたが催眠術が全然下手糞で利用価値がないと分かれば見向きもしなくなるだろう。
それと金もないから金づるにもならないと俺たちが思えば、もう2度と狙わないだろう」
私がこのことを聞いたのは、ただ今回のことを忘れさせても、彼らならまた狙って来る可能性があるからだ。
「私の催眠術は下手糞で子供だましだ。本当に人の心を操るなんてできっこない。
それに金がなくていつもピーピーしている。
こんな貧乏人から金を巻き上げるなんてヤクザの風上にもおけないってことだ。
だからこの療法所は一切構わない方が良い。シノギにはならない。
だがもし他の者がここを資金源にしようとする動きがあったら、最初に眼をつけたのはお前たちなのだから、手を出さないように食い止めるのだ。
いくらシノギにならなくても縄張り侵す奴を許しては駄目だ」
「わかった。こんなところはシノギにはならない。だが他のやつらには手出しさせない」
「ICレコーダーも中の録音を消そう。なんの役にもたたないからだ」
「よし、これで消去した。役に立たないから消去した」
私は2人を帰すと、アケミに言った。
「まず、きちんと勉強して卒業するんだ。親とも少し話し合った方が良い」
「わかった。きちんと勉強して卒業する。親とも色々話し合う」
「売春もやめろ。体を大切にするんだ」
「わかった。売春はやめる。体は大切にしなきゃいけない」
アケミも帰って行った。私はどっと疲れた。
その日は早めに閉所して、休むことにした。