第五話-2
ふむ。どうやら瑞希は紅葉ちゃんのことを知っているらしい。
「なあ瑞希。紅葉ちゃんって、雲木の友達なのか?」
「紅葉、ちゃん……?」
何故か不思議そうな顔をする瑞希。俺が女の子に対して『ちゃん』付けで呼ぶのは、そんなに珍しいことではないはずだが。
「瑞希も瑞希ちゃんって呼んでやろうか?」
「瑞希ちゃん……は、恥ずかしいので遠慮します!」
瑞希は顔を真っ赤に染めてしまった。あらら、照れてやんの。可愛いのう。
今の照れた瑞希は、是非とも写真に収めたいな。
俺は何気なく胸ポケットからケータイを取り出す。
「瑞希ちゃん」
「や、やめてくださ」
カシャッ!撮影成功。
「って何勝手に撮ってるんですか!?」
「すまない。瑞希ちゃんがあまりにも可愛くてつい、な」
「っ〜!お願いですから、その呼び方はやめてください!て、照れるじゃないですか……」
いや〜瑞希最高。でも可哀想だから、そろそろ苛めるのはやめてあげるか。
「それで瑞希。雲木の友達なのか?」
「も、紅葉ちゃんですか?そ、そうですね……」
瑞希はまだ顔が赤い。それだけ恥ずかしかったってことなのだろう。
「紅葉ちゃんが利乃ちゃんとふたりで遊んでるってイメージはないですね。あ、でも利乃ちゃんは紅葉ちゃんを可愛がってますよね」
利乃ちゃん?……ああ、雲木のことか。そういや初めて会ったときに名字しか教えてもらわなかったから、今まで『雲木』って呼んでたけど、これからは別に『利乃』でも構わないよな。
「可愛がってる、か……」
紅葉ちゃんってペットみたいな存在なのか?
それよりもさっきの様子から推測するに、しつこく構う利乃に紅葉ちゃんがキレて、それで利乃はしゅんとしていたってところか。
謝っていたのも、俺ではなく紅葉ちゃんに。そう考えると辻褄が合う。
「前から気になってたんですけど、兄さんと紅葉ちゃんって、いつ頃知り合ったんですか?」
「ん?さっき初めてだが……」
『前から』っておかしな日本語を使うなぁ。もし前々から知り合いなら、瑞希に紹介するってのに。
「はい?えっと……」