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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第五話-1

クリスマスが近いある日の昼休み。
いつものように部室に赴くと、雲木がソファの上で膝を丸めてうずくまっていた。その後ろ、PCの前には見知らぬ女子生徒の姿。
「雲木、その子友達?」
「…………」
雲木はゆっくりと顔をあげて一瞬こちらを見たが、すぐにまた膝に顔をうずめてしまった。
いつも元気なこいつらしくない。何かあったのだろうか。
「どうも。雲木の友達?」
PCの前にいる女子生徒に話しかけると、彼女はじっとこちらを見つめてきた。
「冗談……?」
「うん?」
冗談?何が冗談なんだろう。
「えっと、一応ここは探偵同好会の部室なんだよね」
「知ってる……」
「そう……それで、このPCは探偵同好会の部品なんだ。だから、同好会メンバー以外が弄っちゃダメなんだよね」
「……何を、言っているの……?」
どうやら俺の言葉は伝わらなかったようだ。そんなに難しく言ったつもりはないんだけど。
「君、名前は?」
「……紅葉」
「紅葉ちゃんか。えーと、雲木の友達なのかな?」
「…………」
紅葉ちゃんは何も答えず、PCを弄りはじめた。
「無視ですか……」
初対面の後輩に無視されるなんて、正直ショックだよ。
「なぁ雲木」
「…………ごめんなさい」
「?何がだよ?」
俺、雲木に謝られるようなことしたっけ?記憶にないんだが……。
「ぼ、ボクちょっと用事を思い出した!」
雲木はそう言ってぴょん!と跳び跳ねるように立ち上がった。
「そ、それじゃあね!先輩……さよなら」
「おい、早退するの……ったく」
俺の言葉を最後まで聞かずに、雲木は走り去ってしまった。
「紅葉ちゃんも、そろそろ教室に戻ったら?」
「……キモ」
「えっ」
気のせいかな。初対面の後輩の口から今「キモ」って聞こえたような。
紅葉ちゃんは立ち上がり、俺に挨拶すらせずに部室から出ていってしまった。
「変わった子だったな……」
結局あの子は誰だったんだろうか。雲木の様子が変だったのも気になる。
「兄さん」
開け放たれた扉から、俺の妹であり新入部員の瑞希が入ってきた。
「今、紅葉ちゃんとすれ違って、何か様子がおかしいように感じたんですけど、何かあったんですか?」


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