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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆☆☆☆-2

土曜日、陽向はルンルン気分でスタジオに向かった。
生活にも慣れ、疲れることも少なくなってきていた。
「お疲れー!久しぶりー!」
みんなが集まっている部屋に入る。
「陽向ー!お疲れ。心配したよー。身体、大丈夫?」
洋平が心配そうに陽向を見る。
「うん、もう元気だよ!今日久しぶりだからかなり下手くそになってるかも!先に謝っとくね」
陽向の言葉にみんな笑った。
久しぶりすぎる光景だ。
こうして3人とスタジオに入って何時間も練習する。
練習してもし足りない。
どうしてこんなに楽しいんだろう。
陽向はこれでもかというくらいはしゃぎ回った。
洋平のコーラスが心地良い。
海斗のベースが身体の中心に鳴り響く。
大介のリズム一つ崩さないドラム…。
全てが嬉しくてたまらない。
あたしは、音楽が、バンドが、このメンバーが大好きだ……。

「いやー。今日もやりましたなー」
「久しぶりだったから喉ガラガラだよ」
「確かに。ちょっと枯れてんね」
2時間の練習を終え、近くのファミレスで夕食を摂る。
大介はニヤニヤしながら陽向の顔を見た。
「なに?」
「んー、いや。元気そーでよかったなーと思って」
「あはは。お陰様で」
「お見舞い行きたかったけど、大変だって聞いてたからあんま踏み込んじゃいけないんじゃないかと思って行けなかったんだよね。な?」
大介が洋平と海斗に目を向けると、2人はうんうんと頷いた。
「まっ、でも今はこーやって練習再開できたし、よかったよ本当に。陽向は元気が一番だからな」
大介たちが入院していた理由をどこまで知っているかは分からない。
今日の練習でものすごく気を遣われたりするのかと思っていた。
でも、みんないつもと変わらないペースで練習してくれた。
陽向はそれが嬉しかった。
気遣われてやりづらくなるのは嫌だったから。
彼らは自分のそんな性格を知っている。
だからこそ、一緒にいて心地良いし自然な自分でいられるんだ。

「ありがとね」
帰り道、大介と夜道を歩く。
今日は友達の家に泊まるらしい。
「今日すっごく楽しかった」
陽向がニッと笑うと、大介はぎこちない笑みを浮かべた。
「五十嵐と上手くいってんの?」
「えっ?!」
何で知ってんの?
「え…あ…。なんで?」
「随分前に、五十嵐から聞いてた。付き合ってるって」
「…そーなんだ」
随分前っていつの話だ。
いつかは言わなきゃと思っていたが、大介には言えなかった。
あの頃の事が蘇る。
でも、そう思っているのは自分だけなんじゃないだろうか。
「あー。ついに陽向も彼氏できたかー」
大介はヘラヘラ笑って陽向を横目で見た。
「なんで黙ってんだよっ」
肩を思い切り叩かれる。
「…った!」
「まだ気にしてんの?」
「……」
「じゃあ言わせてもらうけど」
大介はそう言い、立ち止まった。
陽向も歩く足を止める。
黒髪に、毛先だけ金色のアシメの髪の毛。
パッチリとした二重の瞳に見つめられる。
「俺は陽向のことが好きだよ、今でも」
「え…」
思考回路が停止する。
陽向は何も言わずに地面に視線を落とした。
黙っていると、込み上げてくる何かを抑えるように笑い声が聞こえてきた。
「ばーか。友達としてってことだよ。ずっと仲間だって約束したろ?」
大介は笑って陽向の頭をはたいた。
「もう!からかうのやめてよ!」
「五十嵐相手じゃ手出しできねーよ。お似合いだよ、2人」
再び歩き始める。
「羨ましいなぁー。俺も彼女欲しい」
「大介なら彼女くらいすぐできるよ。いないの?いい人。バイトとかさ」
「んー。いねーなー。バイトは女子高生ばっかだからさぁ、付き合ったらロリコン扱いされそーだし」
「あははっ!大介が女子高生と付き合ってるの見てみたい!」
分かれ道まで、いつものようにくだらない話をしながら2人で歩く。
夏の夜の空気が気持ち良い。
交差点に差し掛かり、「じゃ」と言って別々の方向に歩き出す。

「ずっと仲間だって約束したろ?」

どういう意味だったんだろう。
純粋に受け止めていいよね?
あたしも、大介のことが好き。
きっと、どの友達よりも。
一緒にいることが多いから、心から信頼しているし、家族のような存在だ。
考え方も似ていて、双子の兄妹なんじゃないかと思うくらい気が合う。
洋平と海斗だって好きだ。
洋平は可愛い弟みたいな存在。
盛り上げ上手。
海斗はお父さんかな。
たまに暴走するあたしたちをいつも温かい目で見てくれる。
時にはダメだって叱ってくれる。
均衡のとれた家族のような仲間たち。
だからこんなに続いているんだ。
社会人になっても続けていたい。
音楽が好き、バンドが好き…。
それだけじゃない。
みんなが好きだから、あたしはここにいられるんだ。


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