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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第二話-8

「何……?」
「いや、なんでもない」
紅葉とインカムはワンセット。インカムを着けていない紅葉なんて、そんなものは紅葉ではない。
「日向さんからヘソを奪ったのは、鬼の風紀委員長こと天之川桔梗、か……」
ただでさえ目をつけられているのに、その上『ヘソを奪ったか』なんて聞いたら、益々関係が悪化するんじゃないだろうか。
「まぁ、俺が知ってんのはこれくらいだなぁ」
どっこいしょとおっさんくさく立ち上がり、須藤は何も言わずに立ち去ってしまった。
「この学園に、1年も前から超能力者がいたってことになるな……」
「智也……」
「……うん?」
なんか今、誰かに名前を呼ばれたような……?
だが部室にいるのは俺と紅葉の二人だけだ。紅葉は俺のことを『智也』とは呼ばないし、えぇと……それ以前に俺、今まで紅葉になんて呼ばれてたっけ?
「……智也」
また呼ばれた。声は後ろからするが、後ろには紅葉しかいないはずだ。
あっ、そうかPCからの音声だな!?いやぁそれにしても紅葉に声が似てたなー。
「智也、メール……」
「…………紅葉、か?」
振り返らずにそれだけで訊いてみる。
「うん……」
「そ、そうか。どうしていきなり名前で呼ぶんだよ。びっくりしたじゃないか」
「それより、メール……」
はい華麗にスルーされました。
PCに近づき、モニターに表示されている内容を読む。

やぁ、ナクシモノは見つかったかい?

「こいつ……この間のやつか?」
「うん、また学園のPCから送信されてる……」

ボクが厚意でしていることなんだから、無理して見つけることはないんだよ?

「これ、いつ送られてきたんだ?」
「五分前……」
俺が須藤と話してる時か……って早く言えよ。
「返信してみ」
「なんて……?」
「『お前が神様か?』って」
紅葉は言われたとおりに文字を打ちこみ、メールを送信した。
「……きた」
しばらくして返信があった。

日向ひなたからはヘソを奪い、琴梨在花からは視力を奪ったのはお前か、そういう意味ではたしかにボクだよ。呼び方は君たちに任せるけどね。

「こいつが犯人……」


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