第二話-6
「紅葉、どう思う」
「……琴梨さんの時と、同じ」
犯人……いや、日向さんのヘソがなくなればいいと考えた人物のために、超能力あるいは魔法でそれを実践したのは、琴梨さんの視力を奪ったのと同一人物である可能性が高い。
「神様に、一条楓……彼女たちを当たってみたら……?」
「神様とやらが誰なのかは未だ謎なんだが、一条楓は最近ずっと休んでいるらしい」
「……そういえば、1ヶ月ほど更新されていない」
紅葉がマウスを操作し、俺はPCモニターに視線を移す。
「一条楓は、必ず週に一度、記事を書いていた……」
「それが1ヶ月近く更新されてない?そりゃ、休んでるからだろ」
「……彼女の身に、何かあったのかも」
「何か……」
仮に。あくまで仮にだが、一条楓の言う『神様』が琴梨さんから視力を奪い、日向さんからヘソを奪った張本人……つまり超能力者、魔法使いだったとすれば、世界中の人間が見ることのできるサイトに自分のことを書かれ、一条楓を邪魔者だと判断するかもしれない。
そして、一条楓を……。
「日向ひなたから依頼を受けたそうだなぁ」
「須藤、先生……いつも突然現れないでください」
「いい情報を提供してやっから、その代わり100円くれ」
須藤はソファに足を広げて偉そうに座った。
「生徒にお金を要求しないでください」
「いいだろぉ100円ぐらい。どうせお前、バイトしてカネあんだろ?」
「それを言うなら須藤、先生も働いてるんだから、100円ぐらいあるでしょうに」
「ふ……だとよかったんだがなぁ」
本当に100円も持っていないのか、こいつは。
「給料日はいつなんです?」
「明日だ。あぁニコチンが切れる……」
タバコ代わりに須藤がいつも吸っている(?)あのタバコ型お菓子のことを言いたいのだろう。
「あのお菓子にニコチンなんて入ってませんよ」
「給料出たら何か食わせてやっから。な?」
「はぁ、わかりました」
俺はポケットから財布を取り出し、中を漁る。
「…………」
100円玉がなかった。
「……はい」
「ん?」
紅葉が一枚の100円玉を差し出してくる。
「なんだよこれ」
「ひゃくえん……」