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サノバ・ビッチ
【レイプ 官能小説】

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高橋との出会い-6




高橋との親密な付き合いが始まって、二年がたとうとしていた。

多少極端な部分もあったが、清濁を絶妙なバランスで兼ね備えた高橋という男に俺はすっかり心酔し、それほどの人物に目をかけてもらっている自分自身を誇らしいとさえ思うようになっていた。

「あんたはあんなチンケな会社にいたらもったいないで」

高橋はことあるごとにそう言って俺を褒めた。

「いつかチャンスがあったら絶対にあの会社はやめるべきや。その心構えだけはいつでもしとき」

自分にどれほどの能力があり、それをどう生かせるのかはわからなかったが、もっと広い世界が見渡せる場所に出てみたいという気持ちは俺の中で日々強くなっていった。

内田たちとの些細ないざこざは、もうあまり気にならなくなっていた。

高橋に認められ、高橋の役に立つような男になりたいと、俺は純粋に思い始めていた。



高橋が大阪に帰ることになったのは、ちょうどそんな矢先の出来事だった。


本社に戻って人事部長の任に就くという。
おそらくS支店に戻ることはもうないだろう。

誰もが羨む大栄転だった。


───行ってしまうのか。

そう思った瞬間、実の親に捨てられた時より随分素直に、「寂しい」という気持ちがこみ上げてきた。

そしていつの間にか自分の中に芽生えていたそんなにも脆い感情に、俺自身が一番うろたえていた。

高橋に出会うまで、俺は自分を誇らしいなどと思ったことなど一度もなかった。

誰も俺を愛してくれなかったし、認めてもくれなかった。

しかし、高橋だけは違った。

俺という人間を受け入れ、認め、時には厳しく叱ってくれた。

大きな心の支えを失う不安で、俺は激しく動揺していた。


────────



高橋が大阪に帰るという前日、俺は夜遅くS支店の支配人室に呼び出されていた。

店内はとうに照明が落ち、宿直の警備員以外は店に誰も残ってはいないようだった。

「すまんな、こんな時間に。挨拶やら送別会やらでバタバタしてなかなか時間がとれへんかったんやけど、最後にあんたとどうしても飲みたかったんや」

「最後に……俺と……ありがとうございます」

来客用の応接セットのテーブルには、高橋が俺のために用意してくれたビールと寿司が並んでいた。

忙しいスケジュールの中、高橋がこうしてわざわざ俺のために時間を割いてくれたということが純粋に嬉しかった。




「───いよいよ明日ですね」

俺は高橋のコップに冷えたビールを満たしながら呟いた。

「まあ、部長に上がることは前々から言われてたことやしな」

高橋はいつもと変わらぬ穏やかな顔をしている。

「ワシはもともと人事畑やし、現場を離れんのんは正直いろいろ不都合もあるけど、本社のほうが仕事は慣れてるさかい気は楽やわ」

「───そうですか」

高橋にしてみれば、俺との関係が切れたところで困ることなど何もないのだ。

俺ばかりが暗い顔をしているわけにはいかない。

そう思ってはいたが、うまく笑えているか自信がなかった。

意識していた以上に高橋に強く依存してしまっている自分を、俺は改めて認めざるを得なかった。


「────寂しくなりますよ。本当に」

「────そうか。うん……そうやな」


高橋は俺の言葉にゆっくりと頷き、しばらくの間じっと何かを考えていたが、やがて思い切ったように口を開いた。



「───川瀬くん。あんた、Tデパートに来る気はないか?」

「……えっ?」

思いもよらない誘いに、俺は一瞬我が耳を疑った。

「せやから、Tデパートの社員にならへんか、言うてんねん」

「社員に……ですか?」

「うん……正直うちの会社は今、中途採用は一切とってへんのやけど、そこは人事部長のワシがなんとかするさかい」

「いや……でも……俺……学歴もないし……」

「うん……まあ確かにうちの採用基準は最低でも短大卒なんやけどな。あんたの場合はワシが認めたっちゅうことで、特別枠や」

「特別……」

「あんたは今の会社にいたら勿体無い。もっとあんたの能力を生かせる場所に移るべきや」


高橋の熱心な説得に、俺はすっかりのぼせ上がってしまった。



これは───二度とないチャンスかもしれない。

大学進学は諦めたが、幼い頃に抱いた「親父を見返してやりたい」という野望は潰(つい)えたわけではない。

ここでのし上がることで、そのぶんのマイナスを取り返せる───。

そう思った。

「もちろん給料も今の会社より出さしてもらう。住むところも会社で用意するさかい。……な?」

自尊心と優越感をくすぐる高橋の言葉に、俺の胸は踊った。

「……本当に……いいんですか?」

物欲しそうに尻尾を振って、ヨダレを垂らす俺を見て、高橋はさぞ気分がよかっただろう。

この時俺はまだ気付いていなかったのだ。

既に自分が、完全に高橋のオモチャに成り下がっていたことを───。




「ほんなら、契約成立やな?」

「しかし……高橋さんに何かご迷惑がかかるんじゃ……」

「まかしとき。ワシは人事部長やで。──まぁもし仮に迷惑かけたとしても、今更どうっちゅことあれへんがな。───ワシと、あんたの、仲やろ?」

そう言いながら立ち上がり、ゆっくりと俺の隣に座り直した高橋の目には、妙にギラギラとした光が宿っていた。


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