少しずつ-6
はいはい。みんなよかったね。
テンションの低い私を置いて、みんな飲む飲む。
あ、コータの友達、私の友達にアタックしてるみたい。こっち
では、恋バナ始まってるよ。
今日は人間観察を肴に飲むことにしますか。
「中川、お前調子悪い?」
げ、コータ。こんなときに限ってふらないでよ。
コータは合コンに集中してれば?ふんだ!
「ううん。そんなことないよー。みんな楽しそうでいいね。」
「ほんとだなー。ありがとな。そんで、中川はカミカゼで。」
飲むんですか。
いや、飲むよ。
ふらふらになっちゃえば、コータが誰かと仲良くなるところ見
なくて済むもの。
「よっしゃー、飲みますか」
「お前たまにおっさんだよな」
「うるさい」
気がつくと、友達の家で寝ていた。
「気がついたー」
頭が痛い。本当に飲み過ぎた。記憶がないよー。
「ゆかり、昨日がばがば飲んでたと思ったらすぐ寝ちゃって大
変だったんだよー」
いやいや、お恥ずかしい。
「しかもコータ君の肩枕代わりにしちゃって。昨日の中ではコ
ータ君がダントツだったから、みんなちょっと羨ましがってた
よ」
え?どゆこと?
「コータ君も、『いつも頑張ってくれてるしな』って言いなが
ら、ゆかりの頭なでてるんだよ。コータ君ゆかりのこと好きな
んじゃないの?」
は?
「ここまでコータ君がおぶって連れてきてくれたのも知るわけ
ないか」
えーと、コータは、コータは…
私のことなんかなんとも思ってないことだけは分かる。
最初から、そうだったじゃない。
もう一回、寝よう。
全て都合のいい夢かもしれないから。
私、やっぱりコータが…。
5.
暑い。グラウンドは本当に暑い。
試合が近いため練習にも気合が入る。
マネージャー、水ー、遠くから声が聞こえる。
あれからコータはよく話しかけてくれる。キャンパスで見つけ
るのはいつも私だったはずなのに、気がつくと横にいたりする。