DVD鑑賞-1
なに? DVDを借りて来たって? それを2階のホーム・シアーターで見るって?
アクションとロマンスとホラーの3本か。えっ、3本も? 多すぎるだろう。
1本で良いだろう。このアクションにしようぜ。あっ、落すなよ。
あっあっ、何間違えて踏んづけてるんだ?
げげげ……アクションのDVD割れてしまったぞ。お前いくら弁償代かかると……。
そんなこと気にするなって? 気にするよ。
なに? 仕方がないから残りの2本を見ようって?
1本だとレンタル代が勿体無いって?
弁償代は平気なのに、どうしてそこだけしみったれているんだ。
金持ちの考えることはわからない。ああ、頭がおかしくなる。
げげげ……ここがホームシアーターか。まるで映画館じゃあないか。
メ……メイドさんがケーキと紅茶を運んで来てくれた。
ポップコーンでないところが、映画館と違うな。
おい、最初にロマンスにしないで、ホラーにしろよ。どうしてかって?
後にホラーにすると記憶が残るだろう。
それに暗くなってくるし、明るいうちに見るべきだ。
「もしかして、松原は怖がりなのか?」
いやいやいや、そんなことはない。俺はお前を気遣って言っただけだ。
じゃあロマンスにしようぜ。俺は別に構わないぜ、お前さえ良ければ。
くそ、2本目は疲れてくるし、ホラーはきついんだがな。
いやいやいや、別に何も言ってない。
だが何故俺達は男女2人でロマンスを見てるんだ? 恋人同士でもないのに。
おっ、この男結構強引に迫ってるな。あれあれ、あんなとこにぶら下がって。
デートしてくれなきゃ、ここから落ちてやるってか? お前は3歳児か。
あーあー彼女にズボンを下げられてパンツ丸見えだ。ここは笑うところだな。
あれれ……いつの間にか2人は良い仲になってるぞ。まだ5分も経ってないのに。
映画は展開が速いな。
おっ、ラブシーンが始まった。結構濃厚にキスしてるな。
しかも彼女は飛びついて男のウェストを足で挟んでる。男もふらついてない。
俺が春香にあんなことされたら、ああいう風に立っていられるかな?
あっ、いけねえ。俺何考えてるんだ。おや? 春香が少し離れて座ったぞ。
まさか俺が考えたことをテレパシーで感じて、警戒してるとか?
じゃあ、なぜロマンスなんだ。コメディにすれば良かったろうに。
待てよ。もしかしてこの老人は、この若者と同一人物か?
するとこの老婆は……もしかして。
「うるさい! どうして言うんだ。
そこは僕もさっきから気づいていたけど口に出さなかっただけだよ」
えっ、そこが物語の核心部分で味わい深いところだから、黙ってろって?
すまん。
あっ、いけねえ。な……泣けてきた。
あれ? 春香、お前どうしてこっち見てる。お前も画面を見ろよ。
なに?実はこれを見るのは2回目だって?
俺がどこで泣くか見たかっただって? お前さっきの話しと違うだろう!
それじゃあ、ストーリーに気づいたんじゃなくて、知ってたんだろう!
汚い奴だなぁ。ああ、そうだよ。俺は涙もろいところもあるんだ。
なにしろ女のきょうだいの中で育ったからな。
感情的に繊細なところもあるんだ。で、どうして女アレルギーになったかって?
それも女のきょうだいの中で育ったからだよ!
舞台裏を知ってるから表舞台を素直に鑑賞できない体質になってしまったんだ。
別にジンマシンが出るわけじゃない。胸が気持悪くなるんだ。
女独特の何かに反応するんだよ。詳しくは俺自身もわからない。
何に反応してるのかは謎だよ。えっ、それじゃあ、結婚できないだろうって?
お前は自分の心配でもしてろ。あれれ、もう終わっちゃったぞ。