VS欲望-3
順番にページをめくっていき、ふとD組の所で手を止めた。
毎日俺が学校でからかっている見慣れた顔が目に飛び込んできて、思わず噴き出した。
「なんだコイツ、前髪変だし眉毛はやたら立派だし、すげーウケる!」
アルバムの中の石澤の顔は、眉毛よりかなり上の位置で切りそろえられた変なショートカットと、まだ手入れをしていない濃い眉毛がたまらなく俺のツボに入った。
ガハハと笑い転げる俺は、眉をひそめている郁美に気付かないまま、どんどんページをめくっていった。
各クラスの個人写真が終わると、次は部活動の紹介写真や、修学旅行や運動会のスナップが載せられていた。
そこでも俺は目ざとく石澤の姿を見つけては、
「なんでマッシュルームカットなんだよ、ビートルズみてえ」
とか、
「半目になってるのにキチンとピースしてるし!」
などと笑い転げていた。
ひとしきり笑い終えてから、
「いやあ、写真だけでここまで人を笑わせられるとは、アイツも大したもんだ」
と、コーヒーを一口飲んでから携帯を取り出した。
「どうしたの、携帯なんか出しちゃって?」
郁美が訝しげな顔でこちらを見る。
彼女がなんでそんな顔をしているのかを気にも留めなかった俺は、
「アルバムの写メ撮って明日アイツに見せんだよ。絶対顔真っ赤にして怒るぜ」
と、その時の様子を思い浮かべてはニヤニヤしながら言った。
早速、携帯をカメラモードにセットして、さっきの個人写真のページを開く。
「やっぱりこの写真が一番インパクトあるよな、これにしよっと」
と、俺はニヤニヤしながら携帯をアルバムに向けた。
すると郁美が、携帯を持っていた俺の右手を突然グイッと引っ張った。