heel-5
取り乱した彼女の姿に少しだけ焦る。
「な、何だよ……。そんなに必死になって……」
「お願い、ほどいてっ! お願い……!」
彼女の鬼気迫る勢いに押し切られ、慌てて足首の縄を緩めてやる。
パラリと赤い縄がリノリウムの床に落ちる。
そして、両足の自由をようやく得られた雅は、激しく内腿を擦り合わせていた。
「先生……?」
ソファーの上でモゾモゾ脚を擦り合わせても、雅の顔は相変わらず苦しそうで、段々不安が増していく。
雅は、ハア、ハア、と息を弾ませながらゆらりとこちらを見ると、下唇を一度噛んでからゆっくり口を開いた。
「風吹くん、お願い助けてっ! アソコがさっきから熱くておかしくなりそうなのっ!」
「熱い……? 剃ったからか?」
「わかんないっ! わかんないけどとにかくスースーして熱いのおっ……! お願い風吹くん、腕もほどいて……」
ヒックヒックと泣きじゃくる雅を見ていると、徐々に罪悪感が募ってくる。
やり過ぎちまったかな?
「……わかったよ、腕もほどいてやるよ」
雅の身体を抱き閉めるようにして、後ろ手に拘束している縄に手をかけようとした時、ふとあるものが目に入った。
先程使用した、濃い水色をしたシェービングジェル。半分くらい減っているそれは、たまに自分もさほど濃くないヒゲを剃るときに使わせてもらうことがある。
メントールの清涼感がなんともサッパリしていてお気に入りだったのを思い出して、雅が訴えてきたことの意味がようやく理解できた。
ほどくつもりで縄にかけた手を再び引っ込め、足元に転がったそれを手に取った。
そして、再び悪魔の笑みを彼女に向ける。
へへ、面白くなってきた。
「先生、熱いのはこれが原因だよ」
そう言って、俺は手のひらにニュルリとシェービングジェルを出して見せた。
「え……?」
「これさ、メントール入ってるからスースーしてくるんだ。さっきマン毛を剃るときにたっぷり塗ったからだろうな。ドテに塗っただけで結構な刺激になるなんて、新発見だよ」
左手のひらに乗せたジェルを右手の人差し指で掬いとる俺の様子をジッと見ている雅。
そんな彼女に向き直ると、再び口角をニヤリと歪めて口を開いた。
「ってことはさ、コレ……クリトリスなんかに塗っちゃったらどうなっちゃうのかなあ?」
「…………!」
「ほら、脚開けよ」
「い、いや……」
「手間取らせんな、開け」
「お願い……もう許して……」
自由の利かない身体なりに必死で自らを守ろうと、ピタリと脚を閉じるその姿を見ていると、背中がゾクゾクと甘い痺れをもたらすのがわかった。