歪な愛し方-5
こめかみから汗が流れ落ちる。それだけじゃない、すでに身体中は汗でグッショリになっていた。
――ヒーローだった兄貴の裏の顔。
目の前にいる兄貴の顔はいつもと変わらない爽やかなイイ男なのに、底知れぬ恐怖が込み上げてきた。
「や、……めろよ」
震える声をなんとか振り絞る。
雅を助けなければ、そういう気持ちは確かにあるはずなのになぜか身体が動かない。
恐怖?
生唾を一つ飲み込んで、悪者に捕らえられたヒロイン・雅をチラリと見る。
「……ああんっ、あっ、だ、ダメえっ!」
「ほら、早く助けてやらねえと愛しのお姫様がまた目の前で悪者にイカされちゃうぜ」
クチクチと音を立てて雅の中から出たり入ったりする兄貴の長い指は、白く泡立った彼女の恥ずかしい分泌液に塗れて光っていた。
何で、身体が動かねえんだよ。
頭じゃ雅を助けなければいけないのはわかっている。
なのに……。
兄貴は動けない俺を見ながらニヤニヤ笑うだけ。
「あっ、徹平く……、も……ういや……ああっ!」
優しく膣の中を掻き回される雅の顔は、たまらなく色っぽくて、はしたなくて、そんな彼女を見ていれば。
「あああっ、やあああっ! イク、イク……! イッちゃうぅぅ!!」
ああ、そうか――。
嫌々をしながらも、涙を流し達してしまった彼女の姿を見て、答えがようやく出た。
再び顔を赤くして息を切らした雅をチラリと一瞥した兄貴は、妖艶に笑うと、
「でも残念だったな。お前を助けに来たヒーローはとんでもないヒールなんだよ」
と、俺の方を見た。
「え……」
雅も潤んだ瞳で俺を呆然と見つめる。
そう、兄貴の言う通り。
身体が動かなかったのは、俺がこの先の展開を心待ちにしていたから。
助けを呼んでも誰も来ない悲劇のヒロインは、悪の手にかかりどこまでも堕ちていく。
小さな頃から胸を熱くさせていたシーンが、目の前で繰り広げられている。
――俺は、悪党に捕らえられた女に異常なまでに興奮を覚えるヒールそのものだったのだから。