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満月の黒猫
【学園物 官能小説】

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満月の黒猫-2

 悠平が、いた。
 月明かりに照らされた悠平の後ろ姿。何度も何度も目で追った、彼の広い背中がこちらに向けられている。
 「悠平」
私の声に振り返った彼はこの上なくカッコ良かった。自分の語彙力の無さに愕然とする。それを表現する言葉が見つからなかったからだ。
 「来てくれたんだ?」
悠平が面白そうに少しはにかみながら言った。猫みたいだと眩暈のするような感覚のなか思う。ふわふわした髪、きらきらといたずらっぽく光る瞳、
笑うと上がる口角とその奥に並ぶ白い綺麗な歯。黒猫のようにかわいくて、大切にしたくなるような、彼。女の子達が騒ぐのも分かる気がする。
まあ、自分もその中の一人なのだけれど。
 「あんたが呼んだんじゃん」
 「…こっち来なよ」
砂の上、海が目の前に広がる場所。悠平の横に腰を下ろす。
 「何?」
 「…」
悠平は黙ったままだ。
 「沙織さぁ……」
悠平がゆっくりと私のほうへ向く。鎖骨と首の筋が月明かりに浮かび上がった。目が妖しいほど美しく光を抱いている。
「…?!」
見とれて気を抜いた一瞬。
顔を引いた少しの抵抗も虚しく。
悠平の唇が私の唇を塞いだ。



もう引っ込みがつかなくなった。触れただけの短いキスをして沙織を見る。目を見開いて驚いた顔。赤みの差す頬。
「悠、平…?」
沙織の声が少し震えていた。
もう、無理だった。
沙織が。
自分の前にいる。
二人きりでいる。
キスをした。
怯える小動物のように唇を震わせる沙織が。
自分の前に、いる。
 
 理性を保て、と言うほうが無理だった。
 


 こんなことがあっていいんですか?神様。
悠平が私にキスした。有り得ない。こんなことが。けれど、こういうことを自分自身望んでいたことも否めない。
どうしようもなく彼に惹かれていた。たくさんの彼を思う女の子達の中の一番になりたいと思うほどに。彼になら、身体を許しても良いと思うほどに。



 「悠平……」

沙織の声が、悠平の名を呼んだその声が、悠平の辛うじてつながっていた理性が細い糸切るように、
  切れた。 

 沙織を押し倒し、再び唇を塞ぐ。沙織は少し抵抗したかに見えたが、悠平の力に敵うはずも無く。
悠平は沙織の口の中を犯していく。お互いに初めての経験だった。お互い、周りから少々遠ざけられる存在だったのだ。
その、容姿ゆえに。…だがしかし…そんなこと、何の意味も持たないものだった。ただただ本能だけが知っていた。お互いを本能が求めていた。
 
 「っ…ゆう…へい」
沙織が抵抗するように悠平の名前を呼ぶ。それが悠平を余計に興奮させるとは知る由も無く。
 悠平の手が、沙織の身体を這うように下っていく。
 「んっ…」
沙織の口から吐息に混じって艶かしい声が滑り出る。自分の声に恥じらいを感じ、口を手で覆う。
 「声、聞かせて」
悠平は沙織の手を引き剥がす。秋にしては薄着の沙織の服を片手で脱がせ、悠平自身も内心驚くような器用な
手付きで下着さえも脱がしてしまった。沙織は上半身一糸纏わぬ姿となった。


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