いやいやお薬-1
「ぜったい、いやぁぁ!!!!」
思わず絶叫した拍子に、クラリと眩暈がした。ラヴィはうめいてベッドに倒れ伏す。
「すぐ楽になるから」
困り顔のルーディを、涙がいっぱいに溜まったアメジストの瞳が睨む。
「だって……っ!」
真っ赤に火照った顔を濡れタオルで隠そうとしたら、ルーディに取り上げられた。
ぬるくなってしまったそれを、冷たい水に浸してしぼり、フロッケンベルクで医学と錬金術を学んだ彼は、こともなげに言う。
「そんなに嫌がることないじゃないか。――坐薬くらい」
最近、イスパニラ王都では風邪が大流行していた。
かかってもそれほど大事にはならないが、流行性が強く2・3日は高熱が出る。
今朝、ひどい頭痛でラヴィが眼を覚ました時には、ルーディが濡れタオルでせっせと額を冷やしてくれていた。
華奢な見た目に反し、ラヴィは病気とは無縁なほうで、熱など数年ぶりだ。
奴隷市場の劣悪環境でさえ、大丈夫だったのに、この風邪はそうとう強力らしい。
ルーディはとても心配してくれ、熱心に看病してくれた。
それはありがたいのだが……。
丸まって布団を頭からかぶり、ラヴィは断固として拒絶の意を示す。
ルーディが持ってきた、錬金術ギルド特製の風邪薬。
その使い方を聞き、下着を脱ぐよう言われ、絶叫したわけだ。
――たとえ熱が引いても、心理的ダメージで寝込むこと確実。