「誰?」から「彼」へ-2
「で、どーすんの?」
美里がニコニコしながらパンの袋を開ける。
「う〜ん……」
「鈴木さんっ!」
箸を取り出した時、勢いよく教室のドアが開きさっきの男子が入ってくる。
「あのっ!さっきはいきなりすいませんでした!でも俺マジなんで!」
幸い教室にはあまり人がいなかったが、それでも何人かの人が私達を凝視している。
「ちょっ…ちょっと待って!とりあえず場所移そ!」
クラスのみんなの視線が痛かったし、さすがに人前で「ゴメンナサイ」をするのは嫌だ。私は彼をひっぱって階段をかけ降り、茶道室に入った。
「……勝手に入っていーんスか?」
私が鍵を閉めている間に、彼は部屋をキョロキョロ見回しながら畳の上に座った。
「部長だから」
ふ〜ん、とうなずく彼の前に座る。
「えっと……とりあえず、誰?」
「あ、23HRの山下悠也って言います」
やっぱり名前にも聞き覚えが無い。顔は……まぁ、普通にイイ方かも。背もあるし。
「あの……マジであたしのこと好きなの?」
「マジッス!!」
私の顔をしっかり見てそう言ったから、人間違いとかでは無さそうだ。
と、なるとやっぱり疑問が残る。
「……なんであたしのこと好きなの?」
「ん〜っと、鈴木さんっていっつも2番線のホームから電車乗ってますよね?」
「うん……。よく知ってるねぇ」
「俺も同じ電車で、鈴木さんのことよく見かけるんスよ」
「あ、そうなんだ」
「えっと、そんで、鈴木さん達が駅で飴とかアイスとか食ってる時、周りの人達はゴミとか普通に捨ててるんですけど、鈴木さんはいつもちゃんとゴミ箱に捨てに行ってるとか……なんつーか、そういう姿にひかれたって感じっス」
「…………」
驚いた。そんなこと意識してやってたわけじゃないのに……見ててくれた人とかいたんだ。
「……なんかストーカーみたいですんません」
私が黙ってしまったからか、彼はバツの悪そうな顔で謝った。
「あ、ううん。全然。なんか……ちょっと嬉しかったから」
彼はパッと顔を輝かせる。
「じゃあ俺と付き合ってくれるんスか!?」
「え!?そういうわけじゃ……」
「ぃよっしゃー!!」
彼は喜びにあふれ、私の話をまるで聞いていない。
「ちょ……山下くん!!」
「何スか?」