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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第14話-16

 仁仙大学は、前期は惜しくも優勝を逃したが、まだ“総合優勝”は射程圏内にある。法泉印大学のエース、天狼院隼人は一身上の都合で、前期日程終了をもって引退していたから、ライバルはひとり、減っていた。
 だが、後期日程において、間違いなく新たなライバルとして立ちはだかるであろう存在があった。草薙大和と、彼のいる“双葉大学”である。双葉大学は、前期日程終了時点では3位の成績だったが、自分たちが敗れた法泉印大学と、引き分けに持ち込んだその実力は、看過することは出来ない。
(誠治さんを脅かすのは、間違いなく“彼”だ)
 かつて、恋人であった“草薙大和”。淡い記憶を過去に追いやり、“潰すべき敵”と見定めることに対して、葵は何の躊躇もなかった。
「………」
 前期での戦いでは、相手の古傷を抉るように姿を見せて、彼を完膚なきまでに叩き潰そうとした。2部リーグでの活躍を知っていたから、ライバルをひとりでも多く減らすために、その“弱み”に徹底的に付込もうとしたのだ。実際、自分の存在を認識した彼は、大量失点を喫するほどに崩れ、葵自身がとどめを刺すべく放った本塁打によって、その目的は達成されたように思えた。
 だが、“語り草”にもなっている試合中の“ハグ”を捕手に受けてから、大和は立ち直りを見せた。その捕手が女子であり、バレーボールの元・日本代表選手であった蓬莱桜子であることも知っていた彼女は、“ハグ”を受けた後の大和の立ち直りと、自分を吹っ切ったような彼の表情を見て、二人の間にある深い信頼関係を自ずと悟らされた。

 ぎり…

 と、歯噛みしたのは、“草薙大和”を完全に潰せなかった悔しさを思い出したからだ。今や、“最高の右腕”と称されるようになった大和の“弱み”を、唯一持っていた自分だったから、それを活かしきれなかったことが本当に惜しいと感じていた。
 崩れ落ちた草薙大和を、崖っぷちから奮い立たせた、あの女捕手…。その“存在”が、葵にとってはひとつの誤算だった。
「葵くん、葵くん」
「あ、は、はい?」
 誠治に話しかけられるまで、自分が深い思考に入っていることに気がつかなかった。
「顔が、怖かったですよ」
「え、そ、そうでした?」
「ええ、もう。あんまり怖くて、身震いしちゃいましたよ」
「や、やだ…。そんなふうに、言わないでください…」
 おどけた様子の誠治に、葵は照れて、その口元はいつもの麗しい微笑が蘇っていた。


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