消えた気配U-1
「葵・・・?」
はっとした大和が必至に意識を集中して葵の気配を探している。
「なぜ・・・
こんなこと今まで一度もなかったのに・・・・っ!!」
「・・・っどこだっ!!どこにいる葵!!!」
自室を飛び出した大和がバタバタと階段を駆け下りてゆく。
(くそっ・・・ゼン殿が傍にいると思って油断した!!!)
王宮の壁を飛び越えてそのまま地上へ降りようとした大和を追いついた蒼牙が同時に地を蹴った。
「俺も行くぜ大和!!!」
その背後で九条が拳を握りしめている。
(葵が絶命するわけがない・・・
ならば何故葵の気配が消えた・・・?
これはお前の意志なのかっ!?)
夜空を仰ぐ九条の隣に、すっと人影が立つ。仙水だった。
「何か理由があるはずです。葵様が私たちの前から存在を消そうとするほどの理由が・・・」
「恐らく・・・あの町にいるはずです。私たちも行きましょう」
仙水の言葉に頷きもせず九条は、最後に消えた葵の気配を追って急降下した。
「すべてが忌々しいっ!!
・・・あの人間も雷の王も・・・っ!!!葵を取り巻く者たちはすべて消滅すればいい!!」
ギリッと歯を噛みしめる九条の瞳は嫉妬や憎悪にあふれた男の目をしてる。誰よりも深く葵を愛し、彼女のためになら他の犠牲も厭わない・・・危険で一途な漆黒の神官。神官の中でも随一の力を持つ彼は・・・のちの精霊王・エクシスと非常によく似ている。
―――――・・・
先に町に到着した大和と蒼牙は、葵の気配が消えた場所・・・秀悠の家の傍まで来ていた。
「確かこのあたりだ・・・」
だが、一足遅かった。
すでに人の影もなく、葵がどちらに向かったのかさえわからない。
「町医者とあのクソ生意気な女探すしかねぇか・・・」
「なぜそうなる?」
大和が蒼牙に理由を問うと・・・
「この町で葵が親しくしてたやつって言えば、そいつらくらいなもんだろ?ってかよ、ゼンのおっさんの気配もいつの間にか・・・・」
神官たちは葵に気をとられていて、ゼンの気配がいつの間にか消えていることに気が付かなかった。
「・・・一体何があったというのだ」
言い知れぬ不安が大和の胸をざわつかせた。