春-2
学校に着くと、校舎の脇にある掲示板に新しいクラス割りが張り出されていて、人だかりができていた。
真っ先に土橋くんの姿を探すけど、どうやらそこにはいなかった。
つるんでいる友達もいないから、みんなでどこかにいるのだろう。
拍子抜けと安堵の混ざったため息がもれ、私は人だかりの中で自分が何組なのかを知るために、掲示板を見上げた。
―――C組か。
自分の名前はすぐに見つかり、同時にクラスメートの名前をザッと確認する。
沙織とは離れちゃったな。あ、江里子がいる。
英語の辞書を貸してくれた優しい笑顔を思い出して、ホッとした気持ちになる。
女子の名前の羅列ばかりを見ていて、男子の方をなかなか確認できなかったのは、なぜか彼の名前を探すことが気恥ずかしかったから。
もし同じクラスだったら、授業なんて手につかないかもしれない。
一人でそんなことを考えながら、男子の名前欄を確認しようか迷っていると、
「あ、桃子ー!」
と、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
声がする方に視線を向けると、沙織が人ごみの中から私の方に近づいてくる所だった。
「沙織、おはよ」
「クラス離れちゃったねえ。あたしE組だよ。あ、桃子は倫平と同じクラスだから昼休み遊びに行くね!」
沙織に言われ、C組の男子の名前の中に大山くんの名を見つけた。
同時にクラスメートになる男子の名前が一気に視界になだれ込んでくるけど、目的の名前は見当たらなかった。
少し残念な気持ちを押し隠しながらも、
「替わって欲しかったでしょ」
と、私はニヤニヤしながら沙織の腕を小突いてやった。
「いいもんねー。桃子には倫平が浮気しないか見張り係してもらうもん」
無邪気に笑う沙織を見て、私は小さく深呼吸をした。
……昨日のこと、沙織に言わなきゃ。
息を吐ききると、私は意を決して沙織をここから人気のない所に連れ出そうと、彼女の手を引いたその時だった。