異世界の王U-1
ダークは悠久の女官から出された紅茶に口をつけた。穏やかな気候の悠久では、こうした風味の良い茶葉がよく育つ。
「いいね、やはり悠久の茶葉は香りが別格だ」
目を閉じてゆっくりと紅茶の香りを楽しむダークに、ディスタが言葉を投げかけた。
「ゼンはどこにいる?
約束の時間はとうに過ぎているはずだが」
カチャ、と音をたててカップを置いたダークは口元に笑みを浮かべて答えた。
「人界だよ、じ ん か い」
ふふっと笑い、また紅茶に口をつける。
『・・・人界とはどのようなところか・・・』
小高い位置からヴァイスがダークを見つめている。彼にしては珍しく、話に食いついてきた。いつの時代の精霊王も、時の流れや物事にあまり執着することはなく、流れる時を静かに見つめている者が多いのだ。
「なんだいヴァイス、気になるのかい?」
ダークがからかうように横目でヴァイスをみやった。これは珍しいものを見たとばかりに、ダークは楽しそうに笑みを浮かべている。
「ゼンが来たら詳しく話すと思うけど、ひとつだけ教えてあげる」
「・・・・」
ついつい説教くさいディスタさえも、もったいぶるダークを咎めることなく、じっと次の言葉をまっていた。
「人界にも王がいる。しかも・・・女のね」
「・・・・おんな、だと?」
グロリアは目を丸くして驚いている。そもそも、この世界の王は歴代男が王であり、女性が王になったという例外さえないのだ。
「第六の王が女性とは・・・人界というところは歴代の王もずっと女性なのか?」
ディスタも驚いてこそいるが、やはり興味が先立つようだ。