初デートは秋葉原-4
「四年前、ですか?まだお互い中学生の頃ですね……」
俺が中一で、先輩が中二。
……おや?その頃から先輩が今の家に住んでいたなら、同じ中学に通っていたってことにならないか?
「憶えてない、みたいだね……」
先輩はしゅんとしてしまった。
「もしかして同じ中学でした?」
「そこから!?」
「すいません……」
でも憶えていないものは仕方ない。
「憶えてないならいい……」
「えー。教えてくださいよ、銀杏先輩」
「恥ずかしいからいい……って、何気に下の名前で呼ばないで!」
「恋人なんですし、呼び方も変えたほうがいいかなと」
いつまでも『先輩』『大神くん』じゃ、何も進展しない気がするし。
「俺は『銀杏先輩』って呼ぶので、先輩は『翔太くん』と呼んでください」
「よ、呼べるわけないでしょ!」
俺がいないところでは呼んでるみたいなのに。
俺は先輩の目を見つめ、
「銀杏」
とあえて呼び捨てにしてみた。
すると先輩は顔を赤くして「あわあわ」と狼狽える。可愛い。
「おっ、どこのバカップルかと思ったらぁ、先輩じゃないっすかぁ」
どこのチャラ男が話しかけてきたのかと思ったらぁ、近衛だった。
「もしかしてデートっすか?」
「ち、違うよ!」
え、違うの?デートだと思ってたのは俺だけ?
「にしてもぉ、やっぱ付き合ってたんすねぇ。いつも付き合いたての中学生、みたいな?そんなフインキだしてたんでぇ、そうなんじゃないかと思ってたんすよぉ」
付き合いたての中学生って……。え、何?俺と先輩って周りからそんなふうに見えてたの?喜ぶところなのかここは。
「い、色々と指摘したいところがあるけど、今日は見逃してあげる」
なぜかニヤケながら先輩はそう言う。
「ま。邪魔になるといけないんでぇ、ちゃっちゃと退散しますけどぉ、なんつーかぁ、もう少しぃ、周りの目?気にしたほうがいいと思いますよぉ、マジで」
近衛にだけは言われたくないが、たしかにさっきからガンガン視線を感じてるんだよな。
「じゃ、そういうことなんでぇ」
近衛は頭の悪そうな女の子に声をかけ、二人で店を出ていった。