忘れ物-8
「ええまぁ。でも大したものじゃないですよ」
「そうだ。誰かが忘れていったDVDを見ていただけだ。これは俺の物じゃない」
変な逃げかたされた!?仮にバレても自分の物ではないと言い訳するための逃げかただ!
「へ、へぇ。ちょっと見てもいい?」
「いいぞ」
「え……」
銀河先輩は画面を覗き込む。ちょうど俺と会長の間から顔を出しているので、すぐ近くに先輩の顔があってドキドキ。
「再生するぞ」
「ん」
会長が再生ボタンを押す。押してしまう。
『ふふ、ガマンしなくていいの。先生が飲んであげるからね』
「へ?」
画面の中では行為を続けている。AVだから当たり前なんだけどな。
「だ、誰が忘れてったんでしょうね?ここにあったんで、近衛あたりのかなー?」
「あ、その……」
先輩は画面から顔をそむけ――それでもチラチラ気にしていたが――、一人言のように言う。
「お、男の子だから仕方ないけど、が、学校に持ってくるのは関心しないね。うん。それじゃ!」
そして逃げ去っていく先輩。あらぬ誤解を生んでしまったような……。
「近衛か……たしかにありそうだな」
DVDを停止させてそう呟き、会長は教室の中にある机の中身を次々と確認していく。
「会長じゃないんですから、自分のクラスならともかく、生徒会室に忘れ物なんてしませんよ」
「いや、そうでもないみたいだ」
会長はいつも銀河先輩が座っている机の中から、何やらDVDのパッケージを発見したらしい。
どうやらAVではないらしいが、ジャケットがアニメキャラなのでアニメのDVDだろう。タイトルはえーと、
Devil Beats!3
デビルビーツ、でいいんだよな?
「これ、銀河のだと思うか?」
銀河先輩の机の中にあったとはいえ、先輩ってアニメとか見なさそうだからなぁ。
「違うと思います。橘のじゃないですか?」
あいつ生徒会室に何でも置いておくからな。ポータブルDVDプレイヤーもそうだし。
「そうかもな。大神、預かっといてくれ。さすがにこれはAVよりマズイ」
「いやいやAVのほうが明らかにマズイですよ」
「とにかくそういうわけだ。アドレスも大神は知ってるんだろ?伝えておけ」
会長はAVをパッケージの中に戻し、さっさと帰ってしまった。