囚われの王U-1
秀悠を背後にかばいながら葵が物怖じせず、偽りの神官たちと対峙する。
「せっかくの美しいお顔が台無しですよ?麗しの・・・私の陛下」
その言葉に葵は杖を握る手に力を込めて眉間に皺をよせた。
「・・・あなたの陛下は私ではないでしょう」
実際、彼が女王陛下として崇め従っているのは先程の黒髪の女性のはずだ。言ってることとやっている事の違いに葵は違和感を感じた。
「それについては・・・・
後程、貴方を手に入れてからお話しします」
葵を熱っぽく見つめる神官のその眼差しは、恋焦がれた恋人にやっと巡り会えた・・・そんな男の目をしていた。
「・・・な、んだと・・・?」
それまで葵に庇われていた秀悠がゆっくりと起き上がり、葵の前に出ようと体を動かした。
「あんたたちの目的は一体何なんだ・・・っ!!葵さんに何の用が・・・・」
「おしゃべりはそこまでですよ先生。
あなたのような凡人に話すことはありません」
と、脇に控えていた別の神官が煌く槍を秀悠に向かって勢いよく突き立てた。
「・・・・くっ!!」
神官の槍が秀悠の腕をかすり、薄く血がにじんでいる。
武器をもたない秀悠はそれでも怯むことなく葵の前に立った。
「俺は約束したんだ・・・葵さんを守ると・・・」
数時間前ここを発ったゼンの言葉を思い出す。
『一晩俺が戻るまでお前が葵を守れ』
太陽のようなオーラをまとうゼンの、秀悠と交わしたひとつの約束。
・・・・だが、葵はそれを許してはくれなかった。
「秀悠、私のために血を流すことなど許しませんよ」
秀悠の傷口に指先で触れた葵は・・・
「私は戦いたくありません。
ですが・・・愛する者に刃を向けるのであれば・・・・私がお相手いたします」
その様子をじっと見ていた、葵を慕う神官は大きくため息をついた。
「やれやれ・・・・
私の目的はあなたと戦うことではないと言ったはずです。ですが、素直について来てくださるとも思っていませんでしたから、策を考えていたのです」
葵の鋭い視線を受け流すように、神官は微笑んでいる。