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こいの毒
【青春 恋愛小説】

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こいの毒-1

「もう四年も経つのか…早いなぁ」

やっとの思いで鍼灸師の資格を得ることが出来た私は、ここ数日家でのんびりと過ごしていた。そんなある日、ふと本棚の端にたててあった高校時代のアルバムが目についた。そして久しぶりにアルバムを開いたのだった。卒業してからずっと置きっぱなしだったため、表紙は少し埃をかぶっていた。でも中身は“あの頃”のままだった。

「…あ」

私はある一枚の写真を見つけた。

「これ…あの時のだ。懐かしいな。」

それは高校三年の文化祭で撮った写真だった。友達三人とバンドを組んで、文化祭でミニライブをしたのだ。私はドラム担当だった。ただの趣味感覚で教室にも習いに行っていた。今では週末に、ジャズバーでお客の前で演奏をしている。はじめはバンドを組むことなんてこれっぽっちも考えていなかったけれど、この写真に写っているエレキギターを抱えた彼との出会いによって、私の高校生活最後の青春は動き始めたのだった。でもそれは、とても辛くも甘い青春でもあった。

私はそっと写真の彼に触れた。

「ゆう君…」

あなたは今、元気ですか?




「私ドラム習ってるの!!」

高校二年の秋、私は少し自慢っぽく仲のいい友達の和也にドラムの話をした。すると和也がこう言った。

「じゃあさ、ゆうとバンド組んだらいいじゃん」

和也が指差したのは、名前は知ってるものの普段あまりしゃべったことのない男の子だった。そして和也は彼を私の所へ呼んだ。

「何?どうしたの?」
「ゆう、次の文化祭はもうライブしないの?」
「う〜ん…まだ考えてないけど出たいと思ってる」
「次のバンドのドラム担当見つかったぞ!!」
「えっ誰!?」
「この子」

そして彼は私の方を見た。ルックスも体型も普通な彼は、何となく優しい雰囲気の持ち主だった。少なくとも私は彼に興味津々になっていた。私がバンドを組む?本当にこの私が?でもバンドを組むのも悪くない。だって、ドラムもただ習っているだけなんて正直つまらないと思うから。とりあえず私は彼に話し掛けた。

「何の楽器してるの?ベース?」

すると彼はニッコリ微笑んで答えた。

「エレキだよ。ドラム習ってるなんてすごいね」
「こいつギターすっげぇ上手いんだぜ」

和也が付け足すように言った。なんでも趣味でエレキギターを弾き始めたらしく、もう一年以上経験しているそうだ。人は見掛けによらないなぁとしみじみ思った。


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