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天野安冶の受難
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誕生祝い-4

その甘粕が初めて俺の下宿に来てプレゼントを持って来た。
そして色々話しこんで行った。
「もう高校卒業すれば祝いの挨拶もしなくなるから、これが最後と思ってプレゼントだ。
受け取れ。俺が一番大切にしている宝物だ」
表題を見ると、『僕の妹ーー木の実アリス』とある。兄と妹の近親相姦ものだ。
俺は雌狐の姉貴が3人もいるので、姉妹アレルギーになっているから、貰っても見る気はないが、まさかそうは言えない。
ありがとう。大切なものを。悪い。とかなんとか、とにかく受け取った。

「その木の実アリスはアイドル志望だったが、騙されてこの1本を撮らされたそうだ。
その後、木の実アリスは姿を消した。何度見てもかわいそうだ。
お前は女嫌いだって聞いたから、これをオカズにして抜くことはないよな?」
もちろんだ。見ることもないから。だけどそれなら何故俺にくれるんだ?
「木の実アリスが泣きながら『お兄ちゃん、お兄ちゃん』というところが胸にジンと来るんだ」
普通アダルトDVDに感動を求める奴はいないぞ。俺は甘粕の意外な面を見た。
すると甘粕は財布から写真を出した。小学校低学年くらいの女の子の写真だった。
「俺の妹のカンナだ。病気で死ぬ半年前の写真だ」
良く見ると年齢は違うが木の実アリスに目元がなんとなく似ていないこともない。
「だがな。俺の母親は病院にも連れていかなかった。医者に見せたときは手遅れだったんだ」
甘粕はそう言いながら握り緊めた拳を見つめていた。俺はなんかそのDVDを受け取ったものの甘粕に返してやりたくなった。
「違うんだ。俺はお前にこれを持っていて貰いたいんだ。俺の妹だと思って守っていてほしいんだ。お返しはいらない。これをもっていてくれるだけで感謝する」
げげげ……俺にはそんな重責は担えないよ。なんか大変なことになってしまったぞ。
俺は6年間ただ誕生祝の挨拶しか交わしたことのない相手だった甘粕ーーその甘粕の心の奥底の寂しさに一気に触れてしまったんだ。

 


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