囚われの王T-1
「やはり貴方は・・・貴方たちは普通の人間じゃないようですね」
思い切り顔を背けた葵が荒く呼吸をしながら言葉を発した。
「何がです!?私はただの人間です!!」
ぐっと握った男の腕をつかみ、わずかな隙をついて葵が男の腕をすり抜けた。タッと床を蹴り男と距離を置く・・・と、同時に激しい眩暈に膝をついてしまう。
「ぅっ・・・」
「無理をなさらずに・・・
この薬をかがされて意識を失わない人などいないのですよ?通常三日三晩は眠ったままなのですから・・・」
「・・・葵さん?どうしました?開けますよ」
物音に気が付いた秀悠が扉をあけて入ってきた。
(・・・いけないっ!!)
秀悠が部屋に足を踏み入れるより早く、その背後から数人の男が現れ、彼を羽交い絞めにして床に倒した。
「・・・・がっ!!!」
「秀悠!!」
苦しそうに声を詰まらせる秀悠に駆け寄った葵は杖を召喚し秀悠にのしかかる男たちを薙ぎ払った。
素早く秀悠の身を抱えて壁をすり抜ける。高さのあるこの位置から秀悠を抱えて着地するのは危険だった。
ばっと輝く翼が葵の背に現れて二人はゆっくりと地に足をつける。
「大丈夫ですか?秀悠」
まだ苦しそうに息をしている秀悠へと手をかざし、癒しの光を集めた。
「葵さ・・・ん、すみません・・・貴方を守らなくてはいけないの・・・・に」
「いいえ、私が貴方を守りたいのです」
安心させるように笑みを向けた葵だが、その前に神官と呼ばれる数人の男たちの気配が近づき、声が響いた。
「私たちは戦いに来たわけではありません。貴方と一緒にいたゼンという男と・・・そう、貴方に用があってきたのです。美しい乙女・・・」
「ゼン様はここにはいません。私に用があるのならば時間を改めなさい」
強い口調で葵が言い放つと・・・
「女性を奪うのは夜のほうが素敵だと思いませんか?」
「・・・お断りします」