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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆☆-4

翌日のお昼休憩の時間、優菜はいつものように笑顔で陽向に話し掛けてきた。
殺気を感じるのは気のせいだろうか。
陽向は、ブログを見てから優菜に対してどう接していいか分からなくなっていた。
今まで普通に湊の話をしていたのがただの自殺行為だったことに今更気付いた。
「それでさー…ひなちゃん?聞いてる?」
「えっ?!あ、ごめん。考え事してた」
「あはは。何か今日変だよ。具合悪い?」
「全然!ちょー元気!」
こんな事言ったらまた今日ブログに『具合悪くなってそのまま死んじゃえばいいのに』とか書かれそうだ。
考えるだけで鬱になる。
でも、あんなブログの事を考えて言葉を選ぼうとする自分が情けなくなる。
「ねー、こんな忙しくて五十嵐くんと会えるの?」
「うぇっ!?」
突然湊の話をされ、焦って素っ頓狂な声が出てしまった。
「あ…まぁまぁかな…。なんでそんなこと聞くの?」
あたしのバカッ!
なんで話題広げてんの!
「んー。なんとなく。実習ばっかりで会う暇ないじゃん?休みの日だって寝たいしさー」
「いや…寝てるよ、ほとんど」
「一緒に?」
「まさかー!そんな…一緒になんて寝ないよ…」
優菜は何を考えているんだろうか。
恐ろしくてたまらない…。
その日、陽向は帰宅してからバッグを放り投げて着替えもせずに優菜のブログを開いた。
やはり更新されている。
今日の会話の内容がつらつらと書かれ、妬みのような例えようのない彼女の気持ちが書き出されていた。
なんなのもう…。
見なければいい話だが、このブログの存在を知ってしまい、自分と湊の事が延々と書かれている今、見るのをやめることはできなかった。

『作戦決行』

最後の行に書かれた4文字。
何の作戦だ…。
一体何を考えている?
全く分からない。
そして、その下にある画像を見て陽向は「ヒッ!」と声を漏らした。
ぬいぐるみがズタズタに切り刻まれ無惨な姿になっている。
作戦ってこれ?
あたし、殺されちゃうの…?
まさかね。
陽向は画面を閉じて深呼吸した。
そんなことあるはずがない。
現実と化したら逮捕だ。
大丈夫、そんなことあるはずがない。
陽向は気持ちを切り替えて課題に取り掛かる事にした。
明日が終わればあと1週間で終わりだ。
何もかも終わりだ。

『作戦決行』
切り刻まれたぬいぐるみ。
湊は画面を見て息を飲んだ。
最近、今までの比じゃないくらいの更新率に何かおかしいと感じていた。
実習で陽向と2人になって、優菜の心に余裕がなくなってきたんじゃないだろうか。
このままでは陽向が危ない。
陽向は鈍感だし、優菜の事を普通の友達だと思っているに違いない。
もちろん、過去の事など何も知らないはずだ。
このブログにパスワードがつけられたのは確か半年前くらいだった。
いくら入力しても解読できず、そういうのが得意な雅紀に頼んだところ、1分も経たず解読された。
「異常者だね、こいつ」
雅紀はヘラヘラ笑い「ま、頑張れや」と言ったのだった。

湊は陽向に電話しようとしたが、邪魔しちゃいけないと思い、メールを送った。
普段、全くと言っていいほどメールはしないため、変に思われたかもしれないが、そんなのどうでもいい。
何も悟られたくなかったため、『ひなちゃん( ´ ▽ ` )』とふざけたメールを送ってみた。
陽向からの返事は早かった。
『なんだい(0_0)?』
『勉強中?』
『うん!あそーだ!明日どーするー?』
『駅前で何か食お。何時の電車?』
『いつもは18:20くらいに着くよ!』
『りょーかい。そんくらいに駅行くわ』
『ありがとー!楽しみにしてるー(^_^)』
何も起こっていなさそうだ。
陽向もメールに何の疑問も持っていない。
実習よ、早く終われ。
湊はそう願わずにはいられなかった。

約束の金曜日、陽向は一刻も早く帰りたかった。
いそいそと帰る準備をしていると「ひなちゃん急いでる?」と優菜に言われた。
「あ…ちょっとね。今日、約束あるから」
誰と何の約束があると詳しく言うつもりはなかったのに「五十嵐くんと会うの?」とお決まりのニヤニヤ顔で問われた。
そう来られたら「うん」としか答えようがない。
「デートかぁー。いーなー」
「デートってゆーか……。てか、優菜ちゃん彼氏いないの?」
陽向は言った後、自分を殴り殺したいと思った。
優菜を逆上させるのにピッタリの言葉だ。
アホすぎる自分に萎える。
「んー。いないかな。ずっと好きな人がいるから…」
「あ…そ、そーなんだ!あー、なんかお腹空いちゃったなー。早く帰ろ!」
陽向はニッコリ笑った優菜の顔を見てゾッとした。
昨日の事を思い出してしまう。
地雷どころかテポドンの勢いだ。
さっきの言葉を削除してしまいたい。
が、無理だ。
無言の帰り道、電車の中で優菜がニュース画面を見ながら「あ、うちの近くだ」と口を開いた。
ニュースの内容は殺人事件だった。
「そーなの?!気を付けて帰ってね」
「殺人ってさ…」
「え?」
「懲役何年なんだろうね」
「え…な、なんで?」
「んー。なんとなく。一生に一度の人生なら、知らない世界も見てみたいよね」
彼女の一語一句に怯えている自分がいる。
陽向は優菜の顔を見る事ができなかった。
「あはは。なんちゃって」
「はは…」
嘘に聞こえなかった。
優菜の頭の中は湊でいっぱいだ。
湊と付き合っている自分は、殺してしまいたいくらい邪魔な存在に違いない。
いつか、彼女に殺められてしまうのだろうか。
何年も何年も狂った愛情を抱き続け、報われない悲しみと苛立ちに支配され…。
陽向は生きた心地がしなかった。
考えれば考えるほど最悪の結末が頭の中で繰り返される。
実習でも疲れているのに、こんな事でストレス感じるなんてやってられない。
どうしたら終わるの。


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