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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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偽りの王X-1

ゼンの言葉に葵は微笑んだ。






「場所によるのかもしれません。ゼン様とご一緒させていただいた地の民とならば面識もあります」





ふむ、と腕を組んでいるゼンは考える素振りを見せた。





「いっそ『私が人界の王葵です』って公言したらどうだ?」





ぱちくりと目を瞬かせた葵は笑った。





「私と民・・・何も変わりません。特別なことは何も。私だってこの世界に生きるただの人ですから」





秀悠は葵のその言葉を聞いて嬉しそうに目を細めた。





「葵さんのそういうところ好きです。あなたのような王をもったこの世界は本当に恵まれています」





「だが・・・
お前の顔を知らないやつらが多すぎて偽者まで現れる始末だ」





手放しで喜べないゼンは当たりを見回した。町人達は王の訪問をいまかいまかと浮足立っている。





その時、





ため息をついたゼンの傍を数人の町人が慌ただしく駆け抜け、大声をあげた。






「陛下だっ!!
女王陛下と神官様がいらっしゃったぞ!!!!!」






わぁっと盛り上がった民たちが町の入口をほぼこの地の全ての町民で埋め尽くした。





葵やゼン、秀悠がそのあとに続き遠目に見える団体の人の群れを確認した。






「ずいぶんと大所帯だな」






葵の従える神官が4人、それはあまりにも少ないのではないかと感じているゼンの城に仕える家臣の数は実に三百を超える。さらにそのほかに兵士や戦士がいる。






「偽りの王に偽りの神官がおおよそ百・・・」






徐々に近づく人の塊は盛大な町人の歓喜と歓迎によってあたたかく受け入れられた。






「すごいですね。皆さん嬉しそう・・・」






葵に民の気持ちが流れ込んでいるのか、彼女は両手を合わせて幸せそうな顔をして微笑んでいる。





神官と呼ばれる者たちは皆、貴族のような煌びやかな衣装を身にまとい、脇には剣をさしている。

そして・・・




神官たちが道をあけると奥から出てきたのは・・・





「・・・出迎えご苦労。
我こそは人界の王・・・葵」





神官たちがひざまづくと町人たちも慌てて同じように膝をついた。





目を丸くしているゼンと葵、秀悠はあっけにとられて立ち尽くしてしまった。






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