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ミス・フェロモンを倒せ!
【コメディ その他小説】

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作戦第2弾-1

その日、俺の下宿に……あっ、これも説明が遅れたが、俺は高校入学から一人で下宿してるんだ。その理由は3人の姉貴たちから自分を隔離する為さ。
その俺の下宿に岡本に来てもらったよ。もちろん後からサッシーにも来て貰った。
俺のポリシーからすれば、勉強する場所に綺麗なドレスのスカートをひらひらさせて男の下宿に来る女なんてもっての外だが、今回は特例なんだ。
それに仄かに香水をつけてくるのも反則なんだが、これも俺が許可した。
俺が実家に寄って姉貴の男殺しの必殺の香りを失敬してきて、ハンカチに湿らせたものをサッシーに持たせたんだ。
岡本は俺の質問には上の空でサッシーの方にすぐ行って、聞きもしないところを一生懸命教えている。
俺はお茶を入れる振りをして岡本の服にちょっと零したりして粗相をしたんだ。
「駄目じゃない、安治君。岡本さんが濡れてしまったじゃない」
この『君』と『さん』の使い分けもわざと2人を差別化して、岡本が特別な存在であるかのように印象づけてるんだ。
すかさずサッシーは例のハンカチを出すと岡本の服を拭くが、さすがにズボンの前の方は恥ずかしくて拭けない素振りをする。
「あの、そこはご自分で拭いてください」
ちょっと顔を赤らめてサッシーが岡本にハンカチを手渡す時指先が軽く触れて慌てて手を引っ込めた。やることが細かい!
これは全部サッシーがやっている手品なんだ。全く敵に回すには恐ろしい女だよ。
岡本は言われたところを自分で拭くが、まさか社会の窓辺近くを拭いたものを相手に返す訳にはいかない。
「あの……後で洗ってお返しします」
「あっ……いいえ、差し支えなかったら貰ってください。記念に差し上げます」
いったい何の記念だと言いたいが、そこは突っ込まないでおく。
「は……はい、では……」
岡本は手に握ったハンカチを大事そうにポケットに入れる。そこは打ち合わせ通りだ。
「では……さっきの微積分のところをもう一度説明しましょうか?」
岡本が言い出したとき、窓の外にいたヨッシーが俺の合図でサッシーの携帯を鳴らすんだ。
「はい、もしもしパパ? えっ、ママが……それで病院はどこなの?」
名女優サッシーは携帯をしまうと、蒼白い顔をして岡本に謝るんだ。
「ごめんなさい。今……ママが入院したって連絡があって、私ちょっとだけ行って来なくちゃ。あの……必ず戻りますからまた教えてくださいね」
そう言って、サッシーは外に出た。もうここには2度と戻って来ないって寸法さ。
岡本はハンカチをもう一度取り出して黙ってそれを見つめていた。
その時に、俺の姉貴の必殺の香水の香りが漂う。姉貴はものすごいケチな癖に香水には金をかける。
特に薔薇の香りは無敵だと言って集めているんだ。
雌狐の元凶の姉貴に言わせれば、匂いの記憶というのは何十年も残っていて、顔を忘れても匂いがあれば思い出すんだそうだ。
つまりこのハンカチは岡本の心をサッシーに縛っておいて、尾志谷の方に戻らないようにするための保険なんだ。
そうやって、俺は1日目の50点コースをたっぷり教えてもらった。
岡本は早く俺に必要なことを全部教えてしまって、残りの時間をサッシーに割きたい為に猛ダッシュで教えてくれたから助かるんだ。




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