☆☆-7
「んっ…あ…」
更に固くなったものを口の中に入れ、懸命に頭を動かす。
何度もピクンと口の中で湊のものが反応する。
胸を弄る湊の手の動きが激しくなる。
「ぁ…陽向…イキそ……」
「ん…」
喉の奥に当たって息苦しい。
何度も何度もむせ込みそうになる。
湊が腰を浮かせ、好みのリズムを伝えると、陽向はそれに従順に従った。
「っあ…やべっ……イくよ…陽向…」
「んぅっ…ん…」
「は…んっ…ぁ…」
湊は陽向の頭を止めると、陽向の口の中に射精した。
口の中に放出された液体の味がいっぱいに広がる。
「はぁ…ぁ…陽向…。ほら、出しな」
湊がくれたティッシュを無視し、時間をかけて陽向は液体を飲み込んだ。
涙がツーッと頬を伝う。
「泣くくらいなら出しゃいーのに…」
湊は困ったように笑うと、陽向を抱き上げて優しく包んだ。
「すっげー気持ち良かった…」
「…ほんと?」
「ん…。サンキューな」
湊ははにかんで陽向の唇にキスをした。
「精子臭ぇ」
「湊のでしょ!」
「ははっ」
気持ちよかったって言ってもらえてよかった。
湊にぎゅっとしがみつく。
「なに?したくなっちゃった?」
「ううん…。湊…」
「ん?」
「約束守れなくてごめんね」
「まだそんなこと気にしてんのか?もーいいって」
「……」
「お前が元気になってよかったよ。明日からまた頑張れよ」
「はい…」
「はい。じゃ、服着ましょー」
2人でケラケラ笑って、また唇を重ねた。
「またあいつらと実習一緒なの?」
夕食を平らげた後、湊がテレビを見ながら陽向に言った。
陽向はコーヒーを飲みながら「そう」と答えた。
「でも、次の実習は今のグループから更に分かれるの」
そう言った時、ずっと前にひとみが言っていた言葉がフラッシュバックした。
「優菜ちゃん、前、五十嵐のこと好きだったらしーよ。しかも、ストーカー並みの勢いだったらしい」
「五十嵐も引いたって話だよ」
まさか、今はもう関係ないよね。
「佐山優菜ちゃんって知ってる…?」
陽向がおずおずと聞くと湊は「知ってるよ」と、しれっと言った。
「高校一緒だったの?」
「そーだよ」
「湊のこと、好きだったんでしょ?」
陽向の問いに、湊は少し間を置いた後「知らね。興味ねーし」と言った。
「そっか…」
「それがどーしたんだよ」
「次の実習、優菜ちゃんと2人なんだよね…」
「あそ。だから何?」
「……」
優菜の話をした途端、湊は少し怒り気味だった。
「明日も早いんだろ?」
「うん」
「んじゃ、そろそろ帰るかな」
湊は立ち上がると、玄関に向かって行った。
「また来週来るから」
「2週間後じゃないの?」
「じゃあ2週間後にしよーか?」
「いやだ…」
湊は笑うと、陽向のおでこにキスをして「じゃーな」と言って帰っていった。
『五十嵐くん、ひなちゃんと付き合ってるって本当?』
ついこの間、佐山優菜からこんなメールが届いた。
高校時代、毎日のように放課後は教室の外で待ち伏せされ、なんやかんやと話しかけてきた。
最初はただのクラスメイトだと思っていたが、向こうはどうもこちらに気があるらしい。
「付き合って下さい」
と、何度も告られた。
その度に断ったが、優菜の行動はエスカレートするばかりだった。
他の女と付き合っていると知った途端、嫌がらせをしたり、自傷行為をしたりする。
その頃流行っていたブログやホームページを優菜もやっており、何かのきっかけでそれを知った。
興味本意で見てみると、病んでいる記事ばかり。
「どうしたら振り向いてくれるの?」
「ずっと好きだったのに…」
「なんであんなブスが付き合ってるの」
「殺してやりたい」
そんなことばかりが延々と書かれていた。
その記事には優菜の友達からのコメントが毎回のように書かれていた。
「優菜大丈夫?」
「私が側にいるよ!」
彼女を気遣う友達も頭がおかしいと思った。
病みブログが更新された翌日は、案の定、優菜の手首には包帯が巻かれ、自分の彼女は色んな方法で傷付けられていた。
結局その時付き合っていた彼女を守ることができずに別れてしまった。
自分と付き合っていなければ、あんなひどい目に遭わずに済んだのに…。
本気で好きになった女ではなかったが、少し心が痛んだ。
女って裏でコソコソやって、本当に怖えーなと思っていたが、優菜は桁違いの恐ろしさだ。
偶然か、それとも必然か、そんな奴と大学も一緒になってしまった。
学部は違うが同じキャンパスにいると思うだけでため息が出る。
会わなければ良い話だが。
『付き合ってるよ。なんで?』
『噂で聞いたから。ひなちゃんが羨ましいな』
メールを開き、ゾッとした。
また、延々と病みブログを書いているのかと思うと恐ろしくてたまらない。
次のターゲットは陽向に違いない。
もういい年だし、そんなことはないだろうけど、あの頃の思い出が蘇ってくる。
だから、来週も会うと約束したのだ。
どうか、何も起こりませんように。
湊は真夏の夜空に浮かぶ満月を見ながら、神に祈った。