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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆-3

実習が終わったら学校へ行き、図書館のパソコンを占拠することが、月曜日からの日課になっていた。
ひとみは金曜しか行かないと言い、優菜も体調が悪いと言っていたため、二人には何も聞かないことにして毎日の実習で関わるだけになっていた。
浩太も浩太で来てくれはするのだが、全くと言っていいほど役に立たない。
沢野は相変わらず隣に座って黙っているだけで、パソコンがフリーズした時だけ直してくれる。
何のための人員なのだろうか。
陽向はこの二人と図書館に来るたびに頭を悩ませた。

金曜日、朝起きた時の体調は最悪だった。
連日の疲れのせいだろう。
終わりを知らない猛暑と連日の図書館通い。
こんなに辛いのは初めてだ。
発作が起こらないのが奇跡だ。
重い身体を引きずりながら市役所まで電車を乗り継ぐ。
今日よ早く終われ。
頭の中はそれだけでいっぱいだった。
市役所に着き学生専用の部屋に入ると、いつもより無駄にテンションの高いひとみがいた。
「今日でやっと終わるねー!あー長かったー」
まだ今日が始まったばかりだというのに、今日の終わりを考えてここまでテンションがぶち上がるなんて、幸せな人だな。
そんなことを考えている自分の心は荒んでいると思う。
人間は追い込まれると性格悪くなるな。
いい人っていうのは、心に余裕のある人なんだろうなとボーッとした頭で考える。
陽向は力なく笑い、椅子に腰掛けた。
このまま眠ってしまいたい。
帰ったら一番にベッドに入って、死んだように眠るんだ。
そう思っていたが、発表資料を完成させなければならないという仕事が残っている。
考えるだけで嘔吐しそうだ。
そうこうしているうちにメンバーが続々とやって来る。
16時半まで頑張れば、もうここの市役所まで来なくて済むんだ…。
陽向は発表資料の事は割り切り、それだけを励みに今日を頑張ると誓った。

無事に最後のカンファレンスも終わり、残すは発表資料のみとなった。
今日はひとみも優菜も含め5人で学校に向かう。
図書館に入ると、明日の発表会に向けて資料を作る人でごった返していた。
他のグループのみんなと会うのは久しぶりだ。
空いているパソコンを探すが、どれも使われている。
他の校舎の図書館に行くしかなさそうだ。
「きゃー!ひとみー!」
他のグループの女がひとみの姿を見つけて大声を上げた。
この女もひとみと同じ類のギャルだ。
二人は久しぶりの再会にキャーキャー騒いでいる。
「ここ空いてないし、別のとこ行くか」
浩太がそう言い、ひとみに声をかけ看護棟の図書館を後にし、渡り廊下を渡って経営学部の図書館に入った。
テスト間近とあって、こちらも人でごった返している。
しかし、パソコンはガラ空きだ。
5人で1つのパソコンの前に椅子を持って来て作業を始める。
「おー!陽向やるじゃん!」
「ひなちゃんすごーい!」
ひとみと優菜が陽向の作ったパワーポイントを見ながら感激の声を上げた。
「もう、これでいいんじゃない?」
「へっ?」
「やることないじゃん。できてるし」
ひとみは立ち上がって帰ろうとした。
「まだ原稿考えてないからダメだよ!」
「はぁー…そっか…」
再び椅子に腰を下ろす。
パワーポイントは少し修正し、今度は原稿の作成のためにWordを立ち上げる。
陽向がペチペチとキーボードをタイプするのを、他の4人がボーッと見ている。
「ここ、どーしよっか」
「いいんじゃん?それで。陽向が一番流れ分かってるし。あたしなんかの意見は参考にならんでしょー!あはははは!」
何度この会話を繰り返したのだろう。
全く携わっていないことに罪悪感を感じないのだろうか。
みんなの無神経さに腹が立つ。
その後も陽向は無言で原稿を考え続けた。
「あ、そろそろ終電の時間!」
23時を過ぎた頃、そう言って1人ずついなくなっていった。
来ただけでやったつもりになっているのか。
ありがとうの一言も言わずにみんな帰って行く。
最後に残っていたのは沢野だった。
「絵美ちゃん、終電へーきなの?」
「うん、あと10分くらい…。あのさ」
「ん?」
「あたし、それ家でやってこようか?」
初めて沢野が積極的に声を掛けてくれた。
久しぶりに救われた気分になった。
「風間さんばっかりやってて、私、何もできてないし…」
確かにそうだ。
でも沢野だけが何もしていないわけではない。
みんな何もやってくれなかった。
毎日来てくれてありがとう、何もしてくれなかったけど、と嫌味ったらしい考えが頭を駆け巡って、消えた。
「大丈夫だよ。あとちょっとで終わるし。それにあたし近くに住んでるから、何時になってもへーきだからさ。終電乗れなかったら大変じゃん?帰ってへーきだよ」
「ごめんね…」
「最後まで残ってくれてありがとね」
突き放すような言い方になってしまっていたかもしれない。
でも、もう1人になりたかった。
沢野が静かに帰って行った後、陽向は椅子から立ち上がって伸びをした。
目の前が真っ白になり、倒れそうになる。
そういえば、夜ご飯食べてなかった。
もうこんな時間じゃ売店も開いていないだろう。
陽向は椅子に座り直した後、バッグからお昼の残りのぶどうジュースを取り出し、一口飲んだ。
周りにはもう誰もいなくなっていた。
はぁー…何してんだろ、あたし。
突然、何もかもがバカらしくなってきた。
1人で資料作って…何のための実習だ。
何のための発表会だ。
明日の発表会では、自分が作った資料と原稿を我が物顔でみんなが発表するんだ。
腹が立つ。
明日の発表会のプリントを取り出し、ボーッと見つめる。
発表時間10分、質疑応答5分、発表人数2、3人。
あ…やば。
発表者決めてない。


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