3日目-1
そのうち夜中の12時になった。僕はだんだん恐ろしくなった。5分くらい遅れて芳江さんが来た。
昨日は気づかなかったけれど、芳江さんは美人なんだけれど冷たい感じの人で、僕を見てもニコリともしなかった。
美佐さんは優しいお姉さんって感じだったけれど、芳江さんは僕を叱りながら勉強を教える家庭教師って感じだった。家庭教師に習ったことはないけど、そんな感じで僕は心配になった。
この人とエッチなんかできるのかと不安になった。
それに2人きりになっても服を脱いで着替えようとしなかった。僕はもうパジャマになっているのに。
「あのう……僕を抱きしめてくれないんですか?」
僕は不満に思って言った。でも、芳江さんは僕を睨んだ。
「ミツル君だっけ?まず、そのふやけた顔をなんとかしてほしいな」
「えっ?」
「君は気づいていないかもしれないけれど、君は頭の中は美佐さんのことで頭が一杯みたいだね。いったいどんなことを言われたの?全財産でも譲ってくれるとでも言われたの?」
「えっ……」
僕はどうして知ってるのかと思った。
「図星なようね。それとか君の事を愛してるとか、なんでも言うことを聞いてあげるとか……」
「美佐さんから聞いたんですか?」
「違うわよ。大体想像がつくわ。これを見てごらん」
芳江さんは貯金通帳を開いて見せた。そこには1000万円以上の残高が書いてあった。
僕は驚いた。
「これは偽物の通帳よ。ミツル君のお爺さんから持たされたのよ。美佐さんのよりも額が多いでしょう?
知ってる?美佐さんは一人娘で妹たちなんかいないってこと。美人の妹が3人いるとか言われたんでしょう?
後、学校に行かなくても良いとか、単純な中学生が引っかかりそうな出まかせの嘘に騙されて、朝からニヤニヤし続けていたんでしょう?」
僕は顔が熱くなった。どうしてこんな辱めを受けなきゃいけないんだ?
「美佐さんは約束してくれたんだよ。そして僕のことを愛してるって!」
「それは全部2人の命を守るためについた嘘なんだって分からなかった?そうしなきゃ、君たちはトリツキに殺されていたかもしれないんだよ。
閨の睦言って言葉知ってる?エッチをしながら交わした約束は守られなくても罪にはならないんだよ。
ましてこの場合、嘘は大切なんだよ」
僕の気持ちは一気に萎んでしまった。