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トリツキ
【ホラー 官能小説】

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3日目-2

でも芳江さんは、そんな僕にはお構いなしに容赦なく喋り続けた。
「ミツル君。閨の睦言にならないように言っておくけど、明日になったら青年団の男達が君の所に来ると思う。多分酒とかご馳走を持ってね」
「えっ、そうなんですか?」
「ほら、嬉しそうな顔になった。君は中学生だからお酒を飲んじゃ駄目じゃない?」
「で……でも」
「中学生なのにエッチをしたんだから、お酒くらい……そういうこと?
青年団の若者達はどうして来ると思うの?」
「僕を励ましに?」
「表向きはね。でも本当の狙いは君に酒を飲ませて聞きだしたいことがあるのよ」
「な……何をですか?」
「昨日の美佐さんはエッチのときどうだったか?とか、今日の私はどうだったかとかよ。それで多分ミツル君は上機嫌で彼らに報告するのでしょうね」
「……どうしてそんなこと聞くのかな」
「決まってるじゃない。明日聞きそびれたら君から聞けなくなるからよ」
「どうして?」
「明日の……真夜中に君は死ぬから」
「ええっ?!」
僕は驚いて心臓が止まりそうになった。何がなんだかわからない。
「だって、3人目の女の子が決まらないから、死ぬしかないのよ」
僕は喉がカラカラに渇いて来て、ヒューヒューという乾いた空気の音がした。
「3人目の女の子が一番危険な目に遭うって、みんな知ってるから誰も引き受けたがらない。
2人までは村の掟で必ず決めるけど、まさか1日目に見つかる間抜けがいるとは思わないから、誰も3人目のことは考えていなかったのよ」
「3人目はどういう目に遭うんですか?」
「ミツル君、君にはトリツキが見えた?」
「はい、出て行くとき見ました。しっかりと」
「どんな風に見えたかは絶対言わないでね。美佐さんにも、私にも見えないんだから」
「えっ、でも美佐さんは、来たことに気づいていましたよ」
「それは君の様子を見てわかったのよ。でも私たちには見ることが出来ないの」
「そ……そうなんですか」
「でもね、3日目になるとトリツキの念は大きくなっているから、女の子にも見えるってこと。それで怯えてエッチを途中で止めたら2人とも死ぬ。だから死ぬ確率が高いから、誰も希望しないのよ」
僕は時計を見た。もう1時になった。こんなことをしているうちにどんどん時間が近づいて来る。
でも、芳江さんはそのことを気にしていないように言った。
「実際、君のお爺さんが村中頭を下げて廻っても3人目は決まらない。決まらない時はどうなると思う? 
君に選ばせることになるんだよ? でも選んだ相手が断れば君にはどうすることもできない」
「じゃあ、僕は死ぬの?」
「その通り、もうそれは決まったようなものよ。だから、どうせ死ぬなら今日死んでも同じことでしょう?」
「ま……待って、芳江さん、あなたは2人目を引き受けてくれたんじゃ……」
「引き受けたというより、これは村の掟だからと言って、強制的に行われて来たことよ。
言っておくけど美佐さんには恋人がいるの。遠くの町にね。だから相手には知られることはないけれど、私はこの村に婚約者がいるの。
きっと彼は私から離れて行くと思う。一人の中学生の命を守るためにそこまでしてやる必要はあるのかなって……」
芳江さんは腕時計を見ると僕に言った。決心は変わらないというきつい顔を見せた。
「もう1時過ぎね。私はそろそろ行くわ。この村を出てもう戻ってくる積りはないから。婚約者とも会うことはないと思う」
「じゃあ、僕はきょうトリツキに殺されるの?」
「そうね、男の子だったら勇敢に戦って死んでほしいよ。でもそれは君の運命だから私には関係ない。君が助かるのならなんとかしてあげたけど……どうせ君は助からない。無駄なことはしたくないの。ごめんね」
芳江さんは僕に背中を向けると部屋の戸を開けた。
 


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