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ある昏睡患者?の独白
【コメディ 官能小説】

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ただ今昏睡中?-1

年配の男性の声が聞こえた。きっと太っている大きな男だと思った。そして医者らしい。
「息子さんは昏睡状態です。話しかけても無駄です」
「でも、もしかして聞こえているかもしれないじゃないですか?」
これは俺の年老いた母親だ。といってもまだ60代半ばだが父が早くに亡くなって一人で暮らしている。
「聞こえている場合は、話しかけると脳波が反応するのです。息子さんの場合は知覚検査をしても無反応です。聞こえない、感じない。そんな状態です。そして考える活動もしていません。
呼吸し消化し排泄をすることはできますが、植物人間に近い状態です。ただ……脳死はしていません。
このまま一生目覚めることはないと考えて良いでしょう。
家族が認めれば安楽死させても良いという最近の法律ができましたので、その点もご検討ください」
おいおい、ちゃんと検査したのか? 俺はちゃんと感じてるぜ。安楽死なんてとんでもない!
「それと、このままの状態でこの病院に置くことはできません。できれば自宅療養に切り替えてもらいたいのです。
点滴や栄養液などのセットはこちらでお貸しします。また、介護の自宅サービスも利用できますし、入浴など週に1回お迎えのバスが行きます。
病室は足りないので、できればそうして下さい。それが無理なら先ほどの安楽死の件も検討してみて下さい」
だから、安楽死なんかしたくないって! お袋、俺は意識があるんだぞ。
だが、体は動かせない。もちろん声も出せない。目は見えない。けれど、匂いはわかるし、音も聞こえるし、温度もわかる。触感だってちゃんとある。
事実背中がさっきから痒い。誰か搔いてくれーーーぇ!
こういう寝たきりというのは初めての経験なので、戸惑うことばかりだ。
まして昏睡状態?になってるから、いつ起きてるのかいつ寝て夢を見てるのか区別がつかないこともある。

「……検査したことになっているけど、機械は修理に出していたはずよね」
女の声が聞こえた。病院の看護師らしい。誰かと話している。
「院長先生。安楽死の法律適用の事例が欲しいらしいわ。研究会で発表すれば注目を集めるとか言ってたもの」
どうやら看護師同士の話しでは、院長が検査もせずに俺を安楽死させたがってるらしい。やばい!って、つまり非常にまずい事態という意味だ!

なにか夢を見ていたようだった。若い娘の声が聞こえた。お袋と話している。全然記憶にない声だ。
「おじさんは病室から追い出されそうなのですか? それじゃあ、私の務めている病院に転院できるように頼んであげますよ」
「本当? チエミちゃん、助かるわ。どうしようと思っていたところなの」
「うちの病院は小さい病院で、施設器具も揃っていないけれど、寝たきり老人も沢山預かっていますから、まだ入院枠が残ってるはずです」 


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