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ある昏睡患者?の独白
【コメディ 官能小説】

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チエミの正体-1

どこかに俺は運ばれている。ガッタンガッタンと車の中にベッドごと? 運ばれているような感じだ。
そして車は走っている。救急車ではない。若い女が俺の耳元で囁いた。
「おじさん、大丈夫よ。私がついてるから心配しないでね」
だからお前は誰なんだ? チエミって知らないぞ? 俺の40年近い独身人生の中で全く記憶にない名前だ。
おじさんって言ってるけれど、俺にそんな姪はいない。父方も母方も親戚にそんなのいない。

どうも知らないうちに寝ていたらしく、いつの間にかどこかの病院にいるらしい。男の声が聞こえた。今度は痩せた年寄りの感じだ。声が掠れて弱弱しい。
「顔の表情を見ても生き生きしていて今にも目を開けて喋りそうだがなぁ。
一切の知覚反応が見られないという検査結果が出ている以上、昏睡から醒める可能性は皆無だろうなあ。
遠い親戚だというけれど、チエミ君が面倒みてあげるなら、置いてあげても構わないよ」
「ありがとうございます。先生」

俺はその医者に言いたかった。俺は少なくてもお前よりは元気だと。だが手足が動かない。舌も動かない。
ああ、ラーメンが食べたいなぁ。寿司も食いてえ!
鼻から管をさされて直接胃に栄養を流し込んでいるから、味もない。
小便は尿道にバルーンとかを入れられて、自然に垂れ流し状態だ。大の方は一番困る。オムツをしたまま、するんだ。気持悪い!感触もあるし、匂いも凄い。
なんと言っても介護のおばさんがそれを取りかえる時、恥ずかしくって死にたくなる。
だが、馴れてくると早く取りかえてもらいたくて、待つようになる。
汚れたままでいるのは嫌だからだ。オシメを汚して泣く赤ん坊の気持ちがよくわかる。

俺はどうやら個室にいるらしい。というかもう1つベッドがあるんだが、そのチエミという娘が仮眠に使っているみたいだ。だから実質的に個室みたいなものなんだ。
チエミは看護師らしいが、そんなに忙しくないみたいで、頻繁に俺のところに来て声をかけてくれる。
まるで俺に意識があることを知っているみたいに、話しかけてくれるんだ。俺にはそれがありがたかった。
あるときチエミが俺との関係を教えてくれた。
「おじさんのこと、ずっとお母さんの従兄弟だと思っていたよ。でも、お母さんのお父さんの従兄弟だったんだね。
わかる? わたしのお祖父ちゃんはタイゾウだよ。私のお母さんはその娘のテルミ。そして私はテルミの娘のチエミ。
だから私はおじさんの大姪の娘で、おじさんとは6親等の関係なんだ」
ああ、思い出した。タイゾウ爺さんが死んだ時、葬式に5才くらいの女の子が来ていた。だけど、あの後どういう訳か親戚で海水浴に行ったんだ。どうしてだ?俺の記憶違いか?
俺はまだ20才前だったと思う。だが、全然覚えていない。ぽっちゃりした女の子だったことは覚えているけど。あれがチエミって娘なのか。

「おじさん、私おじさんの秘密知ってるよ。私って小さい頃の記憶すごく良く覚えているんだよ。おじさん……私の曽祖父さんが死んだ時、その後でみんなで海水浴行ったこと覚えてる?」
ええっ?! あれ、やっぱり本当だったのか?普通考えられないだろう! 葬式の後海水浴って、なに考えているんだ、うちの親戚は。
「おじさん、わたしのこと可愛がってくれて、すぐ抱っこしてくれたよね。だからおじさんが砂浜で休んでいる時、私おじさんの膝の上に乗ったんだよ。そしたら、おじさんすぐに私を膝から降ろして、もう抱っこしてくれなかった。
わたし訳がわからなくて寂しかったよ」
そんなことあったのか? 抱っこしたことも可愛がったことも覚えてねえぞ。それで海で抱っこしたときから俺が寄せ付けなくなったって?
そんなこと覚えてねえよ。
 


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