投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 796 『STRIKE!!』 798 『STRIKE!!』の最後へ

『SWING UP!!』第12話-9


 …同時刻。
 スポットを、双葉大学軟式野球部のグラウンドに移すと、そこでは、四人の部員が、休養日であるはずのこの日に、二組に別れて、自主練習に励んでいる姿を見ることが出来た。
 4,5月に行われた前期日程は終了し、3位という好成績を収めた軟式野球部だが、それぞれのチームとは2戦目になる後期は、更なる激戦が予想される。
 実力の底上げが求められる中、チーム力を上げるために、個人としてもなにをすべきか、メンバーたちはそれを考えながら、個人練習に励んでいた。
「岡崎さん、もう1セット、お願いします!」
 練習用のユニフォームを泥だらけにして、防護ネットを背にしてグラブを構えているのは、吉川だった。その足元には、無数の軟式ボールが転がっている。
「いいだろう。…いくぞ、吉川!」
 そのわずか数メートル先に、ノック・バットを手にしている岡崎がいた。
 彼は、軟式ボールが十球ずつ収められる専用のケースをもう一度、自分の脇に引き寄せると、そこからボールをひとつ掴むや、即座にそれを、ノックバットで弾き出した。
「!」
 強烈な打球が、吉川の正面に飛ぶ。吉川は、それをグラブで掴むと、自分の足元に放り投げて、すぐさま次の打球を掴むための体勢を取った。
「そらっ!」
 キン、キン、キン、と立て続けに強烈な打球が吉川に襲い掛かる。
「ぐっ……!」
 捕球し損ねて、腹部に直撃するボールもあった。
「なんだ、それは! サードのファンブルは、出塁に直結する! 取りこぼしは、許されんのだぞ!!」
「は、はい! すみません!!」
「そらそら!」
 岡崎の厳しい声を浴びながら、吉川は“ハード・ノック”を懸命にこなし続ける。
「今のは、1点を奪られるプレーだな!」
 グラブに収まらないことがあると、容赦のない岡崎の叱責が飛んだ。
 “ハード・ノック”とは、その名のとおり、間近いところから強烈な打球を飛ばしてもらい、それをひたすら捕り続けるという、苛烈な練習だ。
「ぐわっ…!」
「しっかり捕らないから、痛い思いをするんだ! そら、もういっちょいくぞ!」
「くっ……!」
 いくら軟式ボールとは言え、鋭い打球を顎に当てれば、相当に痛い思いをする。それが嫌ならば、たとえバウンドの難しい打球でも、きちんとグラブに収めるしかない。
「吉川、ラスト!」
「………!」
 ぜいぜい、と、肩で息をしながらも吉川は、自分の顔面目掛けて打ち放たれた岡崎のノックボールを、両手で受け止め、グラブの中にしっかりと捕まえた。
「よし! ナイスキャッチだ!」
 反応が一瞬でも遅れれば、間違いなく顔面を痛打していた打球だ。片手で雑に処理をしようとしても、打球の勢いに負けて、ボールを零していたかもしれない。
 朦朧としながらも、反応はしっかりとする。吉川は、自分の身体に、内野手としての反応を刻み付けるため、この“ハード・ノック”を岡崎に志願して、続けていたのだ。最後の1球に対する捕球の姿勢を見ても、その成果は出始めていた。
「………」
 ぐら、と、吉川の身体が崩れ、前のめりになる。
「よく、がんばったな。ナイスガッツだ、吉川」
 岡崎は、その身体をしっかりと受け止め、厳しい声を浴びせ続けたノックの最中とは違い、優しい声を吉川にかけていた。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 796 『STRIKE!!』 798 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前