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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第12話-11

「ふふふ。付き合うようになってしばらくなのに、片瀬はもう、木戸のことを、随分と尻に敷いているな」
「「!?」」
 思いがけない岡崎からの茶々に、結花と航の顔が、同時に茹で上がった。
 結花と航は、正式に交際を初めて2週間ほどになる。だが、周りにはそれと伝えてはいない。別段、隠すことでもないのだが、何となく照れてしまって、伝えそびれていたのだ。
「まさか、気がついていないとでも?」
 既に、全部員は、二人が男女としてもペアになったことを、知っている。そもそも、名前で呼び合うようになっている時点で、気がつかないほうがどうかしていよう。
「野球のことで切磋琢磨できるんだ。これ以上ないくらい、お似合いだよ」
「お、岡崎センパイ〜!」
「………」
 “もう勘弁してください”とばかりに、ますます顔を紅くする、結花と航であった。
「さあ、区切りがついたところで、今日はおしまいにしよう」
「「「はい!」」」
 岡崎の仕切りで、自主練習は終わりの時間を迎えた。
 始まりの頃は、大和もいたのだが、ストレッチとサーキット・トレーニングを数セット合同でこなした後、彼は、ロードワークを兼ねてということで、3時間は優にかかる距離を、そのまま歩いて帰宅していた。“徒歩帰宅”は、今日のような“ノースロー調整日”の、大和にとっての“慣例”である。
 投球練習を行ったので、航は、結花の手伝いを受けながら、肩と肘のアイシングを念入りに施す。吉川も、打球を受けた身体の各所に、湿布を貼り付けていた。
「木戸は、高校の時に、控え投手の経験があったからわかるが…」
 岡崎は、前期日程終了と時を同じくして、監督のエレナから了解を受ける形で、航が投球練習を始めたことについて、言及している。
「片瀬が、キャッチャーの練習を始めたのは、どういう心境からか、聞いてはおきたいな」
 あくまでも、結花が二塁手のレギュラーであることは変わりない。しかし、正規の練習の合間に、航の投球練習を受ける結花の姿は、間違いなく、捕手としての訓練を心がけているものであって、岡崎としては、その真意を図りかねているところもあった。
 自分の相棒が、投球練習を始めたから、それについていくため、という単純な理由では片付けられないほど、結花は真剣に、捕手としての鍛錬を積んでいる。
「リスク・マネジメントです。桜子センパイも、足に古傷抱えてますし、万が一のときのためにって、ちょっと考えたんですよ」
 前期日程の最終戦で、桜子は、見ている方が不安になるくらいの、激しい当たりを二度もこなしていた。頑丈で頑健で、故障などとは無縁のようにも見える桜子だが、考えてみれば、アキレス腱を断裂した経験があるのだし、捕手というポジションの特性上、やはり、怪我に対する懸念は、常に念頭に置く必要がある。
「セカンドは、吉川センパイが守ってくれますから」
 だから、自分が捕手の練習をしておけば、怪我に伴うコンバートのリスクは、さらに抑えることができる、と、結花は考えるようになったのだ。


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