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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第12話-12

「なるほど…。片瀬は、本当にセンスがあるな」
「え、そ、そうですか?」
 その“センス”の塊といってよい岡崎からそういわれると、悪い気はしないが、照れてしまう。
「木戸と片瀬のバッテリーか…。草薙と蓬莱に負けないくらいの、息のあったものになりそうだ」
 “楽しみが増えたな”と、岡崎は付け加えて、その話をおしまいにした。
「それじゃあ、今日はこれで解散とするか」
 着替えをそれぞれ済ませて(もちろん、結花を先に。男連中は、後で)、帰宅の準備を終えると、岡崎は部室の鍵を閉める。
「木戸、片瀬をしっかり、送り届けてやらんとな。そういえば、親御さんにあいさつはしたのか?」
 結花が一人っ子であることを、岡崎は立場上、把握している。ひとり娘が、誰かと親密に交際するようになったのなら、その親としては、相手のことを早く知りたいと、思うものだろう。
「う……」
「?」
 実は、まさに今日が、その日なのである。航は、結花の両親に、自分がそのひとり娘と交際していることを、挨拶も交えて、報告するつもりだった。
 結花の両親はいま、手薬煉引いて、一人娘の彼氏である航のことを、待っていることだろう。
「………」
 練習中は忘れていた緊張が、航の全身を固くしている。普段は冷静沈着なさしもの航も、交際相手の両親への挨拶は、試合の時よりも胸の鼓動を早める、一大事なのだ。…当然といえば、当然だが。
「まあ、なんだ。…とにかく、頑張れ」
 岡崎としては、そう言うより他はなかった。
「吉川は、確か、“連れ”を待たせてるんだよな」
「!? ど、どうして、それを……!」
 まさか自分にも、岡崎の“茶々”が飛び火してくるとは思わず、吉川は呆然としている。そんな素振りを、今まで見せたことはないはずなのに、と…。
「心配そうにして、グラウンドの脇から、お前を見ている子がいたからな」
 さながら“巨○の星”に出てくるヒロインのように、木陰から吉川を見守る人影を、岡崎は見逃していなかった。彼の“勘の良さ”は、野球に限らない。
「今年に入ってからか? 観客席でも、見かけるようになった子だな。だから、すぐに、わかったんだが…」
「…恐れ入りました」
 吉川の交際相手は、同じゼミに所属している同回生の女子である。春先は、挨拶を交わす程度の仲だったのだが、野球をしている吉川の姿に興味を惹かれたようで、そこから話題が発展し、気が合うようになって、つい先ごろ、告白を受ける形で、交際を始めるようになったとのことであった。
「待ちわびているだろうから、早く行ってやらないとな」
「は、はい。お言葉に甘えて、お先に失礼します!」
 言うや、吉川は、体中に張られた湿布の香りを後に残して、その場を駆け足で去っていった。その背中に羽根が生えたようにも見えたのは、彼も男だということだ。
「それじゃあ、岡崎センパイ。わたしたちも、これで」
「失礼します、岡崎先輩」
「ああ。気をつけてな」
 岡崎は右手を挙げて、後輩たちを家路に送り出した。


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