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【教師 官能小説】

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ヒーロー-3








「じゃあ、徹平くんのことよろしくね」


再びきちんと制服を着こなしたゆかり先輩は、ヒラヒラと手を振って部屋を出ていった。


バタンと閉められたドアを一瞥してから俺は下着姿のままベッドに倒れ込んで、ため息混じりに一人ごちた。


「女って怖ぇ」


さっきまであんなにアンアン喘いで、息も絶え絶えに乱れまくっていたくせに、いざアレが終わるや否や、さっさと服着て、契約を持ち出してくる。


まあ、こんなん慣れっこだけれども。


顔よし、頭よし、運動神経よしの兄貴は当然女からもモテるわけで、なんとかして兄貴にお近づきになりたい女どもはたくさんいた。


でも、兄貴は自分がヒーローであることを自覚しているのかチャラついた女遊びなど一切しないし、何でか彼女も作らない。


どこか一線を置いて女の子と接する兄貴を陥落させるには、まず弟である俺を手なずけてからと考える女がちらほら現れ始めたのは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。


ゆかり先輩もそのクチだ。


一向に兄貴とお近づきになれない彼女は、まず弟である俺に近づいて「徹平くんとオトモダチになりたいの」と、猫なで声を出してきた。


そこでズルい俺は、兄貴の一番近い存在と言う立場を利用して、言葉巧みにベッドに誘い込んで甘い蜜を吸うのだ。


「口利きしてもいいけど、それなりに見返り欲しいんですよね」


こう言えば、大体の女は意味がわかるらしく、俺の前で脚を開く。



そもそも“オトモダチ”になりたいという言葉は建前に過ぎず、本音は兄貴の彼女になって、セックスしたいのがミエミエなのだから、俺がつまみ食いするのに何の罪悪感も感じなかった。


実際、弟から攻めて兄に近づこうなんて策略を立てる女は、そこそこ自分に自信があって、ズルくて、すぐ股を開く頭の悪い女が多かったし、後腐れのない関係を持つのにはちょうどよかったのだ。


だから俺は、口先だけで「兄貴にうまいこと言っときますから」なんて適当な約束をして、あとは見返りとしてオイシイ思いをさせていただく。


こんな感じで俺はいつも兄貴のおこぼれを頂戴するような真似を繰り返していたせいか、自分には女に対して愛おしいとか好きだとか言う、所謂恋慕の情が欠落しているように思えた。


でも、そんな自分が堪らなく嫌になる時がある。


友達が、誰それを好きだとか、誰それにフラれただとか、そんなことで一喜一憂する姿を羨ましく思うことはしょっちゅうある。


自分は、本気で誰かを好きになることはないんじゃなかろうか?


この疑問は、ふとした瞬間にまとわりついて離れなくなってしまった。


しかし、それを悩む俺に気付いた兄貴は、「きっとまだ本当に好きな女に出会ってないだけなんだよ。オレもまだ本気で誰かを好きになったことがないからおんなじだな」と優しく言ってくれた。


兄貴とおんなじ。その言葉にどれだけ安心しただろうか。


打算的な女どもを相手にもせず、ハイエナみたいな真似を続ける俺を見下すこともしない兄貴は、ここでもやっぱりヒーローだった。


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