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一番近くて遠い君へ
【初恋 恋愛小説】

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一番近くて遠い君へ-2

「えと、ここの訳なんだけど・・・。」
まさか教えると思わなかったのか、少し驚いた後奈波の顔がぱぁっと明るくなる。
どくん・・・っ。
心臓が跳ねる。
少し赤くなってしまったであろう顔を見られないよう奈波の背後に回り、慌てて教科書に集中した。
「これは、ここのとこをこう訳してだ、こうすれば出来るだろ?」
問題を解く俺に奈波はぱちぱち拍手を送り
「さすが、なおくん!あったまいい〜!」
・・・当たり前だ。
奈波は覚えていないだろうけど、小学生の時100点を取った
俺に奈波が「凄い」だの「かっこいい」だのと喜んで褒め称えたから、俺は勉強を頑張った。もっと奈波に喜んで欲しくて。
勉強だけでなく運動も頑張ったんだ。
奈波に自分を見てほしくて。
そんなことを考えていたら、奈波が不意にくるっと自分の方に顔を向ける。
それが、背後にいた自分にはあまりに至近距離過ぎて俺は飛び退いてしまった。
「急に、振り向くなっ!」
どくどくどく・・・。
耳の奥で早鐘が鳴っている。
「あ・・・ごめん。・・・あの、ありがとう・・・。」
とても奈波の顔が直視できなかった俺は、その時奈波がどんな顔をしていたかなんて知る由もなかった。

次の日は雨が降っていた---
俺は昨夜怒鳴ってしまったこともあり、なかなか部屋からでて行くことが出来なかった。
奈波に会ったらどんな顔をすればいいかわからなかったから。
昨夜のことで自分がよくわかった。
やっぱり俺は帰ってくるべきではなかった、と。
奈波が同じ屋根の下で眠っている、というだけで気持ちが高ぶってしまう。
この気持ちが無くならない限り、優しくもできず傷付けてしまう。
はぁ・・・。
溜め息を吐く。
勇気を出して下に降りると、奈波は友達と雨の中初詣に行った
と母親が教えてくれた。
ほ・・・とすると同時に俺は荷物をまとめた。
学校の寮に帰るために。

玄関で靴を履いていると母親が慌てて止めに入ってきた。
「ちょっと!何もそんな急いで帰ることないでしょ?ななちゃんに挨拶もしないで!」
奈波に挨拶なんてしたら帰れなくなるだろ、という言葉は言えなくて。
「・・・もともと、今回だって帰る予定じゃなかったんだ。守衛が実家に帰るから、できれば寮生も帰ってくれって言われたから仕方なく帰ってきたんだ。」
「なお・・・。」
「それに、奈波には会いたくなかったんだ。」
自分が辛くなるから・・・。
そう言ってがちゃり、とドアを開けると奈波が傘も差さずに呆然と立っていた。

「なな・・・。」
俺が名前を呟くと
「あ・・・、ごめ・・・ん。あの、なおくんがいるからって早めに帰ってきたんだけど・・・。ごめんね。」
精一杯の強がった笑顔、とても悲しい笑顔を残して奈波は家を後にした。
残された俺はどうしていいか分からずドアノブを見つめていると
「直哉っ!早くななちゃんを追いかけなさい!謝っておいで!」
母親はそう怒鳴ると荷物を取り上げ玄関から俺を追い出し、傘を渡した後かちゃん、と鍵を閉めた。
「仲直りするまで、荷物は渡さないからね!」


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