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一番近くて遠い君へ
【初恋 恋愛小説】

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一番近くて遠い君へ-3

前を見ると雨の中、視界にようやく入る所を奈波が走っているのが見えた。
俺は捕まえるため必死で追いかけた。
捕まえて・・・その後どうするのかは考えず。
「な・・・んで、追いかけてくるのよぉ・・・!」
捕まえた奈波の第一声。
頬を伝う水滴は雨なのか、涙なのか・・・。
「なな・・・。」
なんて声を掛けたらいいのか分からなくて捕まえた手にぎゅっ
・・・と力を込める。
「・・・追いかけなくていいじゃん!私なんかに会いたくなかったんでしょう?なによ!なおくんなんて!嫌味のように寮付きの男子校なんか行っちゃって!そんなに私と一緒じゃ嫌だったんだ!あんなレベル高い上に男子校じゃ絶対一緒にならないし反対もされないもんね!」
普段穏やかな分、興奮してしまうと手がつけられない。
「違う・・・って。」
言ってみるけど、伝わらない。
「そんなに嫌われてるなんて思わなかった!」
違う・・・嫌ってなんか・・・。
無意識に奈波を抱きしめる。
「違う・・・嫌ってなんかない。」
抱きしめる腕に力を込めるが、奈波は首を振って逃れようとする。
「うそつかなくていいよ。・・・中途半端に優しくされると逆に辛い・・・。」
俺の顔も見ずに俯いている。

そんな表情をさせたくなかった。
ただ俺は奈波が好きで
大切でその笑顔を
壊したくなかったんだ・・・

「嘘じゃない。・・・その逆だ。ずっと、奈波が好きだった。」
びくり、と奈波の体が揺れるのを感じた。
軽蔑するだろうか?
嫌悪するだろうか?
兄弟としてずっと過ごしてきた人間にこんなこと言われて・・・。
ふいに両頬を手で覆われる。
顔をうっすら赤くしてふわり、とした柔らかい笑顔の奈波がいた。
「嬉し・・・。私もずっとなおくんが・・・好き。」
そこまで言って、まるで電池が切れたかのように奈波は俺にもたれかかってきた。
「奈波・・・!」

38.5℃・・・。
倒れた奈波を慌てておぶり、家まで走って行った。
どうやらあまり体調が良くなかったところに雨に濡れたものだから発熱したらしい。
発熱したのは俺のせい、という理由で帰寮は延期となった。
「う〜、なおくん本当に帰っちゃうの?」
奈波の熱はなかなか下がらず結局冬休み最後の日まで布団の中で過ごしていた。
恨めしそうにこちらを見上げる。
そんな顔をされると帰り難い。
だけど、明日から学校は始まるから帰らないわけにはいかない。
「・・・週末は、よほどの事がない限り帰ってくるから。」
髪の毛をそっと梳きながら言う。
「約束だよ?待ってるから。」
上目使いでお願いされる。
「・・・ったく。」
どうしてそうも可愛い顔ができるのか。
そ・・・、と片手で奈波の視界を遮る。
軽く互いの唇を合わせた。
「なおく・・・。」
急なことに驚いたのか、もともとほんのり赤い顔をさらに赤くして口をパクパクさせている。
「・・・風邪、俺のせいなんだろ?半分、もらっていってやるよ。」

寮に帰って2日後、本当に奈波の風邪をもらってうなっていた
ということは格好悪いので奈波には秘密だ。

        〜Fin〜


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