湯治客案内-4
出張が決まってから何も考えずに峡谷割目温泉に寄ることを計画したものの、仕事に追われて本当に何も考える余裕がなくて、行き当たりばったりに近かった。
実際バス停を降りて管理人と話をするまでは、ただバスの中でスマホで割目温泉の裏サイトを隅から隅まで見返していた。
何十回、何百回、珠子の写真や動画や書き込みを見てオナニーしたことか、自分がさえない小太りの男なのは十分自覚していたが、豪快なデブの珠子の写真を見てからなんか勇気づけられた。
しまいには、2次元美少女オタクからリアルのデブ専に転向してしまったくらいだ。
階段を下りる途中から、すでに中年夫婦の会話が丸聞こえだった。
「あんら、やんだわぁ、ホントに来た。恥ずかしいわぁ」
おもろい夫婦は湯船の縁に座って足湯を楽しんでいた。
もちろん、禁止事項はきちんと守って2人とも真っ裸で。
「女の子じゃなくって、男の人だわ、あらホント、いややわぁ」
イヤと言っているわりには、裸を隠すフリもせず、そのまま腰掛けて足をバタつかせているだけ。
オバちゃんの垂れ気味の乳房とふっくらとした身体は、ずっと湯に入っていたのかピンク色に染まっていた。
「お先、いただいてます」
亭主が先にあいさつした。
「あ、お、お邪魔します、野郎の一人旅ですけど、てへへ」
「邪魔なんかしてへんて、かまへん、あいさつせえへんで、温泉入っとるだけや、なぁ」
柱と屋根だけの掘っ立て小屋で、持ってきたバスタオルと脱いだTシャツとパンツを置き、ふと手にしたコンパクトデジカメをひとまずその上にポンと乗っけた。
「おにいさんも湯治なんかい?」
「あ、いや、出張の帰りで、てへへ、ちょっと寄り道して」
皮が被って縮んだチンポと、萎みきった金玉袋は手の平で十分隠せた。
湯船に近づいて桶でかけ湯をした際に、小さなチンポと金玉を夫婦にバッチリ見られた。
「にいさん、隠さんでええやろ、うちのとうちゃんだって自慢できるもんやないしなぁ、あっははぁ」
明らかに短小包茎チンポを見たオバちゃんの、全然気遣いにならないフォローではあった。
あわてて湯の中に入ってホッと一息するも、またオバちゃんが話しかけてくる。
「うちらは温泉巡りでわざわざ来たんやけど、出張帰りってえらく遠回りせんと来られへんやろ?」
「あ、まぁ、今日は東京帰るだけなんで、だったらぶらりと、温泉浸かるのもいいかなって、てへへ」
「まぁ、せっかくの混浴露天風呂でも、こんなオバちゃんと一緒やったら残念やね」
亭主が慰めると、
「なに、この後に女の子来るって、管理人のオッチャン言ってたやん、なぁ、にいさん楽しみやなぁ」
オバちゃんは立ち上がると、ほかの湯だまりに移動し始めた。
きちんと囲われて湯船になっているのはここだけで、後は天然の岩場の窪みに湧き出した温泉が自然と溜まっている湯だまりが渓流に沿って点在していた。
「あーあぁ、恥ずかしい恥ずかしい」
恥ずかしいと言いながらも隠す様子はなく四つん這いになった尻からはもじゃもじゃの陰毛が見え隠れし、オバちゃんは垂れたおっぱいを揺らしながら湯だまりのひとつに浸った。
「お前よりか、こっちがよっぽど恥ずかしいわ」
亭主もオバちゃんの後を追うようにチンポをぶらつかせて他の湯だまりに移動していった。
とりあえず目の前のおもろい夫婦が退散したので、湯から立ち上がり縁に腰掛けて十分に温まった身体を渓谷の涼風で冷ますことに。
「黒澤さん、俺のちっちゃい包茎チンポ見たらなんて言うかな?」
ふとそんな妄想を巡らせながら、期待を込めて珠子が来るのを待つことに。
あいかわらずパソコンで帳簿の計算をしている剛田の耳に、聞き慣れた軽自動車の音が聞こえた。
「剛田さん、こんにちは、めっちゃ遅れたっす、なんや民宿の寄り合いで足止めされて」
今日はめずらしくブレザーにブラウス、スカートという出で立ちの珠子が、遅くなった理由を言いながら売店に入ってきた。
「おう、お客さん、さっき来てもう温泉浸かっとる、小太りのにいさん。あと、中年夫婦も一緒だかんな」
「待たせちゃった。あ、ほかに客いるん? めずらしいっすね」
珠子はロッカーの前で服を脱ぎながら、剛田からお客情報を聞き出す。
「緊張してたけど、まぁ、わざわざ来たんだから。あとは関西弁のおもろい夫婦。こっちは気にせんでも大丈夫だべ」
素早く真っ裸になった珠子は、首から村役場の身分証明カードをぶら下げ、あわてて裏に回った。
「おもろい夫婦って、おもしろそうっすね。久しぶりのお客様ご案内っすから、いっぱいいた方が楽しいっすよ」
そう言いながら階段を体中の肉を揺らしてのっしのっし降りていった。